食べログで評価「無限大」の鰻屋?半年先まで予約満席、「情報による美味しさの鰻」論
もうこの時点で、私のギアが完全にうなぎの「う」に入った。どうしても「かぶと」に行ってみたくなった。ここの鰻を食べてみたい。いや、食べつくしたい。
6カ月先まで予約でいっぱい
思い立ったが吉日。たとえ数時間の行列であろうとも並んで食べる覚悟を決めた。池袋に向かう勢いで、まずはお店に電話をすることにした。営業時間前だったので、電話はすんなりつながった。受け答えの感じも悪くない。藤森さんの奥さんだろうか。
「すいません。はじめてお電話します。えーと、予約は取れますでしょうか」と確認したところ、「はい。大丈夫ですよ」と返ってきた。「えー! 取れるんだー。ラッキー!」と内心ほくそ笑みながら、恐る恐る続けて「今晩なんて無理ですよねえ~。えへ、えへ、えへ」と聞いてみる。返事を待つが少し間があいた。そして、私は自分がどれだけ間抜けな質問をしたのかを思い知らされることになる。電話の向こうから優しい声で諭すように告げられた。
「今は6カ月先までご予約はいっぱいでして。ですから、来年の2月以降であればお取りできますよ」
半年待ちなのか。そりゃ、そうだ。これが、「食べログ4.36」の実力だ。そんなに世の中、甘くはない。それなのに、私はまだ未練がましく質問を重ねてしまった。
「当日、並んでも入れませんよね」
今度は間髪を容れず返ってきた。
「毎日、ご来店いただいたお客様にお詫びをして、お帰りいただいております」
思いついてその日のうちに紛れ込もうなんて、なんて浅はかだったのか。心が乱れたまま「またお電話します……」と、へなへなと電話を切った。
飲食店としての正しさ
嵐のコンサートばりに席が取れないのだ。当日券も発行していないし、ダフ屋も出ない。改めて、「かぶと」のレビューをチェックすると、ほとんどが常連客で、1カ月、2カ月、3カ月毎に再訪を重ねていることがわかる。つまり、この店の限定15席(カウンター8席、小上がり3席、テーブル4席)は、大切な常連のお得意様だけで常に満杯なのだろう。夕方17時からと19時からの2回転、毎日30名しか店には入れないのだ。その人数分の鰻をきっちり仕入れて、仕込んで、提供しているに違いない。飲食店としてはとても正しい運営方法である。改めて、この店に行きたくなった。