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2023.07.05 08:46
2016.08.05 00:11
白井美由里「消費者行動のインサイト」
なぜ、キツい仕事後にチョコケーキを選ぶのか?私たちを「快楽的消費」に走らせる正体
この現象のメカニズムは次の通りです。通常、諦める状況では獲得する状況よりもそれぞれの選択肢がもたらすベネフィットについて入念にイメージします。もともと快楽的消費は実用的消費よりも魅力的ですが、その魅力度がこのイメージにより一層強化され、失うことのデメリットを大きく感じるのです。その結果、諦める状況では快楽的消費を選択する被験者が多くなったのです。
このことから、企業がコストダウンなどで商品の属性をカットする場合、快楽につながる属性をカットするのは避けたほうがいいということになります。また、スポーツカーなどの贅沢品では、リースなどで一定期間使ってもらった後に購入できるという選択肢を与えると、楽しさを経験した後だけに手放したくなくなり、購入する消費者は多くなると予想されます。
快楽的消費は選択肢があると満足度が高くなる
快楽的消費は、複数の選択肢の中から選んで購入するほうが、予め決められているものを購入する場合よりも、対象の評価や満足度が高くなることが実証されています。ボッティとマクギルは実験を行い、地元にあるスパのマッサージ券を用意し、それをがんばって仕事をした自分へのご褒美に使う状況(快楽的消費)と体に痛みがあり医者の勧めで使う状況(実用的消費)のどちらかを想定してもらいました。
また、マッサージ券について4つの選択肢がある状況と選択肢のない状況のどちらかを想定してもらいました【註9】。分析の結果、被験者が期待する満足度は、快楽的消費の場合には選択肢のあるマッサージ券のほうが高くなりましたが、実用的消費ではマッサージ券のタイプによる違いはありませんでした。
快楽的消費は自分が楽しむために行われるので、自分が選択できるか否かの違いは、ニーズが明確な実用的消費よりも大きく感じられるのです。つまり、快楽的消費では自分で選ぶ楽しさを提供することで、さらに評価や満足度を高められるということになります。コース料理では、前菜、メイン料理、デザート、飲み物それぞれにある程度の選択肢を提供したほうがよいでしょう。パッケージツアーも同様です。また、スポーツカーなどの贅沢品では選択肢のあるオプションが用意されていると満足度が一層高くなると思われます。
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