「使い勝手悪い」楽天、アマゾンとの戦いを放棄か…ポイント大盤振る舞い戦術の限界
ポイント大盤振る舞いは楽天の焦り?
楽天経済圏の考え方は、米シアーズ、英テスコ、そして日本の丸井がとった戦略と基本的に同じだ。ただ、楽天の違うところは、ポイントを強力な武器として使っていることだろう。
グループ内のサービスを利用すればするほど、ポイントの特典が大きくなる。たとえば、楽天銀行が発行するクレジットカードを楽天市場での決済手段として使えば、ポイント還元率は通常の1%から4%に増大する。また楽天銀行カードローンでは、ローン入会時に1000ポイントが付与される。ショッピングなどで貯めたポイントを銀行の振込み手数料に利用することもできる。
楽天証券も、投資信託の残高が10万円ごとに毎月4ポイント付与される。つまり、投信を500万円保有していると、年間で2400ポイントも貯まる。さらに、取引手数料の1%相当がポイントで返ってくるような仕組みもある。
グループ内での客の循環は、ポイントによって促進される。そして、楽天市場を通じてだけの新客獲得では顧客基盤を大きくできないと考えてか、最近の楽天はポイントを武器として外部からの積極的な新規客獲得に乗り出している。14年以降は楽天ポイントを実店舗でも使えるようにして、相乗りすることをいとわない共通ポイントとして会員数を増やす作戦に出ているのだ。現在、全国1万3000店舗でポイントが貯められるようになっている。
日経MJに「焦りが透けてみえる」と書かれた策のなかに、ポイントの大盤振る舞いがある。購買しなくともポイントを提供する戦術もその一つだ。たとえば、15年に「洋服の青山」を展開する青山商事が採用した「楽天チェック」サービスは、来店しただけでポイントが貯まる制度だ。青山はもともと、カルチュア・コンビニエンス・クラブが展開するTカードと提携していて、商品を買えばTポイントがもらえることになっている。楽天チェックで、競合他社の領域にも切り込む戦術だ。
そういった積極策のおかげで、会員数はTカードや三菱商事の関連会社が運用するPontaを抜いて1億500万人で業界最多となっている。
ポイントの大盤振る舞いをきっかけに会員になってもらえれば、最終的には楽天グループが提供する70ものサービスの購買客になってもらえるかもしれないという意図はわかる。だが、ポイント会員が増えても、データを抱えた良質の購買客が増えるとは限らない。ポイント会員のうちのどれだけが、楽天経済圏の中を循環してくれる優良客になってくれるのだろうか。