「使い勝手悪い」楽天、アマゾンとの戦いを放棄か…ポイント大盤振る舞い戦術の限界
小売業は、客との信頼感を構築しなければならない
楽天は、楽天トラベルやその他のサービス業、特にフィンテック事業に、アマゾンとは異なる活路を見いだしている。勢いのかげる楽天市場からの新規客にだけ頼るのではなく、リアル店舗を含めた広い市場から新規客を収集する方法を選択しており、そのための武器としてポイントを利用しているという推測のもとに話を進めてきた。
推測が正しいとして、この戦略の大きな問題点は、ポイントの大盤振る舞いで集めた会員客が、楽天市場でのショッピングを通じて育成されたロイヤルティの高い顧客のように、グループ全体のサービスも利用するようになってくれるかどうかにある。
前述したように、顧客基盤には顧客データだけでなく顧客との関係性も含まれる。何回も購買した結果として生まれる信頼感、ロイヤルティがあるからこそ、顧客は楽天の金融サービスに伝統的銀行、証券、保険会社にはない魅力を感じてくれるのだ。
たとえば、丸井も新規会員を集めるために他社との提携カードを展開し始めている。これまで20社と提携しているが、企業提携よりも商業施設との提携カードのほうが、利用率が丸井店舗と同程度になっていると発表している。実際に購買することで生まれ育てられた関係性が重要だということだろう。
そこにあるのは、快適なショッピング経験から生まれた小売業者への信頼感だ。快適という言葉には、便利、簡単、誠実さ、信頼性などが含まれている。
08年の金融危機の後、世界的に銀行への信頼感が失われたなかで、自分が常に利用してダイレクトなコミュニケーションが存在する小売業への信頼感が増した。「小売店は自分達の味方だ」と考える消費者が多くなったという調査結果がある。日本でも、伝統的銀行への不信感はバブル崩壊後から継続して高く、反対にスーパーマーケットやコンビニエンスストアへの信頼感は、特に11年の東日本大震災後に高くなっている。そういった意味で、小売業が消費者向けの金融サービスに入る大きなチャンスが到来しているといえる。