事実、女性である筆者でさえ、もと村で食べた1400円の「牛かつ麦飯とろろセット」(130グラム)は物足りなく感じるほどだった。牛かつが2倍の260グラムのセットもあるが、価格は2200円に跳ね上がる。
「会社員の1回当たりの昼食代が平均617円ということを考えると、ランチ2回分以上の価格設定に見合った味やボリュームでなければ、消費者は満足できません。いくら牛肉でも、一般的なとんかつ定食が1000円以下で食べられることを考えると、割高感は否めません」(同)
レアで食べる牛かつは安全性にも疑問符?
そもそも、牛かつとは、もと村歌舞伎町店の説明によると「牛肉に小麦粉・とき卵・パン粉をつけ、油で30秒間揚げたもの」を指す。揚げ時間が短いので、牛肉がレアに仕上がるのが特徴とされている。しかし、牛かつは「肉質」や「食の安全」の面でも問題が指摘されているという。
「牛かつ店を訪れた人たちは、赤い肉の断面をスマートフォンで写真に撮り、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などにアップして喜んでいますが、肉をレアで食べるには、質が相当よくないと危険なのは周知の事実。
加えて、もと村の店内には『おいしくお召し上がりいただく為に牛脂を加えております』の一文があります。これは、使っている肉が牛脂を加えた加工肉であるということを示しています。この牛脂注入肉は、原価を安く抑えられる半面、生の状態で食べるのは問題があるとされています。その加工肉をレアの状態で提供するというのは、問題が多いと言わざるを得ません」(同)
もと村では、客ごとに焼き石が置かれ、好みの焼き加減まで加熱して食べることが推奨されており、店内には「お肉は石でよく焼いてからお召し上がりください」と明記されている。とはいえ、牛かつはレアが売りの食べ物だけに、多くの客が、あまり加熱せずに食べているのが実情だ。そのためか、同様に「ご高齢の方、お子様には、火を通してご提供を致しております」との一文もある。
もちろん、国産牛の使用をアピールして安全性を強調するチェーン店もあるが、客とすれば、どんな肉を使っているかを店ごとに判別するのは難しい。そのため、前述したような事情も相まって、リピート率も下がっていくわけだ。
そこで、もと村に牛かつの「肉質」について取材を申し込んだが、「取材には一切応じていない」との返答。京都勝牛にも同じ内容で問い合わせると、こちらは「弊社の肉は牛脂を一切使っておらず、加工肉ではありません」とのことだった。