食品表示アドバイザーで消費者問題研究所代表の垣田達哉氏は、このような加工肉を提供している店について、「安全面に不安を感じます」と語る。
「飲食店の成型肉による食中毒は、ペッパーランチの事例(2009年に発生したO-157による食中毒事件)もあるように、数年前から発生しています。成型肉を提供する店では、その旨を表示することがガイドラインで規定されています。
揚げ時間を短くして中をレア状態にするのは、昨今の『やわらかいものがおいしい』という風潮に影響されています。ここでは詳しく述べませんが、成型肉やミンチ肉などは、表面にある大腸菌が内部に入り込むため、中まで十分に加熱しないと危険なのです。
店側も客側も、ユッケ事件(11年に『焼肉酒家えびす』で発生した食中毒事件)を忘れたかのように、あるいは『自分の店に限って』『私(あるいは自分の子供)に限って』と他人事のように考えて過ごしていることが問題です。店側も客側も、食のリスクをもっと真剣に考えていただきたいと思います」(垣田氏)
飽きっぽい日本人がつくり出すブーム
また、垣田氏は「行列ができる店」について、以下のような見解を示す。
「日本人は『熱しやすく冷めやすい』のが特徴です。なんでもすぐに飽きるのです。それは、『同じリスクにさらされ続けない』という意味では、とてもいいことです。
私は、マスコミの方々に『あの行列ができた店(食)は今』という特集をやったらどうですか、と言うことがあります。中傷記事になりやすいので難しいと思いますが、一時的なブームで終わる店(食)はけっこう多いのではないかと思います。かつてのナタ・デ・ココなどは典型的な事例です。最近では、ドーナツやパンケーキなどでも、そうした事例がありそうです。
長時間並んで空腹で食べれば、なんでもおいしいものです。しかも、マスコミや知人から『おいしい』と刷り込まれています。ましてや、何時間も並んで食べた手前、『おいしいと言わなければ、自分がバカにされる』という見栄があります。だから、人には『おいしい』と言うのですが、二度目は最初ほどおいしいという実感が湧かないものです。そうした事情に加え、『満腹感に欠けて値段が高い』と感じれば、客足は遠のくでしょう。
コンビニが弁当や惣菜、菓子類で次々と新商品を打ち出していかなければならないのは、飽きっぽい日本人に対応しなければ売り上げが落ちるからです」
ブーム終焉の感が漂う牛かつ。移り変わりの激しい外食産業の中で、流行に飛びつくSNSユーザーの若者客が一周した、これからが正念場といえそうだ。
(文=藤野ゆり/清談社)