だからJリーグがスカパー!から消えても、それでDAZNに以降する加入者はせいぜい50万人くらいにとどまるだろう。逆にそれ以外の一般加入者がJリーグというコンテンツがあるからという理由で、DAZNに契約変更をするという流れは起きないだろう。
スカパー!から見れば「新基本パック」の加入者数はそれほど減らず、Jリーグファンが加入していた「JリーグMAX」(月額2962円、今回の事情から2017年1月末に提供終了)というパックセットの加入者がDAZN(月額1750円)に流れるという現象が起きるだけだろう。
その意味では、DAZNが「Jリーグというコンテンツを得たことで、HuluやNetflixよりもたくさんの加入者を日本市場で得られるのではないか?」と期待していたとすれば、それは期待外れに終わるかもしれない。結局のところDAZNにはコアなサッカーファン50万人が押し寄せて、それで終わりということになりかねない。
Jリーグを放映して得られる新規加入者が50万人だとすると、年間収入は、パフォームにとって年間で100億円程度にしかならない。ほかに波及しないのであれば、そのような権利に10年間で2100億円を支払うということは割に合わないことになる。
2100億円はパフォームにとっては日本市場に参入するための勝負をかけた長期投資ということになるのだが、採算に厳しい海外企業の場合、期待したほどの加入者が集まらない場合は早々に日本市場から撤退するという判断もありうる。
そうなったら最後に割を食うのはJリーグかもしれない。コアなユーザーが楽しんでサッカーを見るスカパー!というインフラを失い、その結果、未来のファン数の広がりという可能性を失ってしまうかもしれないのだ。
やはりスカパー!が提示した通り、Jリーグの適正な10年間の放映権料は一桁小さいのではないか? 今回の決定がサッカー界にマイナスの影響を及ぼさなければいいと、私は一ファンとして思うのだが、みなさんはいかがだろう?
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)