2月24日金曜日、「プレミアムフライデー」がスタートした。経済産業省と日本経済団体連合会(経団連)、さらに小売・飲食などの業界団体が旗振り役となり、毎月末の金曜日は15時に仕事を終えて帰るように従業員に呼びかけ、モノやコトの消費喚起につなげようという官民挙げての試みだ。
政府が進める「働き方改革」につなげる目的もあるとされ、当日は安倍晋三首相も15時に首相官邸での執務を終え、マスコミを引き連れて余暇を楽しむパフォーマンスを見せた。
しかし、毎日残業で定時に帰ることが少ない一般の会社員にとって、プレミアムフライデーは別世界の話だ。ただでさえ、2月は日数が少なく、多くの企業は決算前のため、仕事も山積みになっている。実際、経産省によると、プレミアムフライデーの導入を表明した企業は、たったの約170社。SMBC日興証券は、プレミアムフライデーの恩恵を受けるのは最大でも働く人全体の6.5%程度と試算している。
実際のところ、史上初のプレミアムフライデーの実態はどうだったのだろうか。丸の内や新橋を中心に、当日の様子をリポートする。
日本橋には中年女性の列、閑散とする新橋SL広場
まず向かったのは、百貨店の「大丸東京店」だ。当日は、芸能人が登場してプレミアムフライデーを記念したカウントダウンイベントが華々しく開催されると宣伝されていた。
しかし、会場に着くと客がまばらで、なぜか寒々とした雰囲気が漂っている。そして、14時50分に関係者にシャンパンを注いだグラスが配られ、同56分にモデルの絵美里が登場して乾杯したのだが、何を急いでいるのか、わずか1分ほどであっという間にイベントが終了してしまった。
対照的に、多くの一般客がつめかけて入場用の整理券まで配布されていたのが、東京駅、日本橋、丸の内エリアで行われた「東京エキマチ×プレミアムフライデー」というJR東日本、三井不動産、三菱地所による連携イベントだ。
盛況の理由は、都内3カ所をつなぐかたちでゴージャスなリムジンが無料運行し、車中ではシャンパンのサービスもあるという「東京エキマチプレミアムリムジン」。飲み物や食事が振る舞われる乾杯イベントが行われた日本橋会場に着いたときには、すでに長蛇の列ができていた。
無料運行するリムジン
もっとも、よく見ると、列に並んでいるのは会社員ではなく、目立つのは着飾った中年女性ばかり。記者が見た限りでは、「15時に仕事を終えてやってきた」風の会社員の姿はほとんど確認できなかった。
次に向かったのは、新橋の「SL広場」。「15時に仕事を終え、これからプレミアムフライデーを満喫しようとしている会社員がいるかもしれない」と思ったのだが、話を聞こうにもSL広場も閑散としており、16時になっても会社員の姿などまったくない。プレミアムフライデー当日の新橋の様子を取材に来たテレビ局のスタッフが、カメラを片手に途方に暮れているありさまだった。