会社員の姿なきプレミアムフライデーの現実
プレミアムフライデーに合わせて、外食産業や旅行会社、アミューズメント施設などは独自にセールやキャンペーンを実施することを発表し、消費の盛り上がりに期待を寄せていた。
そこで、まずプレミアムフライデーの特別企画を実施した紳士服専門店最大手「洋服の青山新橋烏森口店」に行ってみると、店内は会社員風の客で大賑わい。さすがに、同店限定で「メンズアイテム全品半額」という過去にない規模のタイムバーゲンを実施しただけのことはある。
会社員風の客で賑わう店内
店員に聞くと、「タイムセール開始前から、たくさんのお客様がいらっしゃっています。こちらもスタッフを増やして、態勢を整えて対応しています」と汗だくになりながら話してくれた。当然ながら、商品やサービスを提供する側で働いている人たちには、プレミアムフライデーは関係ない。
「ブックオフ西五反田店」では、先着400名にブックオフ価格で税込1000円以内の書籍1冊を無料でプレゼントする企画を15~18時限定で実施。記者が同店に行ったときには、すでに無料券300枚が15時45分の時点で配布終了していた。会社員がこの恩恵にあずかるには、15時になったら即仕事を終えて会社を出るしかない。案の定、客層は高齢者や主婦、学生ばかりで会社員の姿はまったくなかった。
賑わう店内
しかし、18時を過ぎると、飲食店は賑わいを見せ始めた。まぐろ料理中心の居酒屋「ニッポンまぐろ漁業団新橋店」は、プレミアムフライデー対策で通常17時の開店時間を15時に早めたところ、会社員客が増えたという。
「今日はすでに予約でいっぱいです。週末はいつも忙しいのですが、プレミアムフライデー効果はあったんじゃないでしょうか」(同店店員)
老舗ビアホールの「銀座ライオン新橋店」は、プレミアムフライデーに合わせて15時からエビス生ビールを全品半額にするサービスを実施。ところが、会社員風の客に何人か声をかけてみたが、返ってきたのはこんな内容ばかりだった。
「うちの会社はプレミアムフライデーを導入していないので、今日も普通に17時の定時でした。今日は、ビールが安いらしいんで、なんとなく来ちゃいました」
吉野家の限定メニュー「半丼」は大外れ?
結局、15時から18時すぎまで、多くの会社員風の人たちに声をかけてみたが、プレミアムフライデーで15時に仕事を終えたのは、わずか1組だった。前述の「働く人全体の6.5%程度」という試算の通り、やはりプレミアムフライデーの恩恵を受けるのは大企業の一部だけのようだ。
しかも、プレミアムフライデーで需要が増えるとされた「コト消費」にしても、惜しみなくお金が使えるのは大企業で働く高収入の会社員とその家族などに限られる。プレミアムフライデー推進協議会のホームページには、高級ホテルの豪華なディナー、ワインやシャンパン、ブランド牛の霜降りステーキなどの写真が掲載されているが、こんなぜいたくな余暇を楽しめるのは、ごく一部の人たちだけだろう。