久間章生元防衛大臣とも親密な関係
その謎を解くひとつのエピソードがある。この間、前出の三和ホームサービスはある不動産取引の仲立ちをしている。07年1月のことで、取引の対象は東京・赤坂のビルだった。その相手先がじつに興味深い。取得先は久間章生・防衛大臣(当時)の親密女性が経営する会社で、三和ホームサービスはその日のうちにビルを転売、売った先は韓国人と思しき都内在住の男性が代表取締役を務めるPAN JAPANなる会社だった。
関連する裁判記録によれば、久間氏の親密女性はその後、売却代金のうち数億円を息子名義などでAPFグループの関連ファンドに出資したという。さらに興味深いのは売った先であるPAN JAPANだ。その後、13年5月になり同社の名前は韓国内でにわかに注目されることとなる。中堅財閥CJグループの経営トップをめぐる疑獄事件で、秘密資金の運用先としてその存在が取り沙汰されたのである。
此下代表が経営する三和ホームサービスがいかなる経緯で件の転売取引の間に入ったのかはわからないが、タイを舞台にのし上がったカギは、そのあたりにあるのかもしれない。のちに政界引退に追い込まれた久間氏は14年6月に昭和HDの社外取締役に就任しており、親密ぶりは今も続いている。
また、こんな話もある。07年4月頃から此下代表はA.P.F.アセットマネージメントなど数社を次々と大阪府内で設立しているが、一部で行っていたのは高利回りを謳った一般投資家からの出資金集めだった。もっともそれは無登録営業。13年6月、A.P.F.アセットマネージメントは近畿財務局から警告書を受けている。同社は損失を与えた個人投資家から裁判も起こされていた。
複雑な金融取引と新株の大量発行
さて、APFグループでもうひとつ不透明な点は、グループ会社間で頻繁に行われている複雑な金融取引と新株の大量発行である。
それが架空増資疑惑として持ち上がったのは10年6月のことだ。監視委によってやり玉に挙げられたのは2年前に行われた昭和ゴム(当時)の増資だった。強制調査先は、東京・表参道にあった此下代表の居住マンションだけでなく、大阪府内にある実父の自宅や顧問弁護士事務所にも及んだ。のちに嫌疑は晴れ押収物も返還されたが、昭和HDが13年6月に国を相手取り損害賠償請求訴訟を起こすなど、これを機にAPFグループは当局への敵対姿勢を強めていった。