食品 当社は「協調性・チームワーク力」を面接の指標に入れていますが、確かに協調性は面接ではわからない。5人か10人ぐらいで何かを一緒にやらせてみて、どういう動きをするかを見ないとわからないし、面接のやりとりで見極めるのは相当難しい。
IT 人間は必ず感情が入ります。どうしても相手の印象に左右されますし、間違えます。私なんか最たるもので、決して面接がうまいとはいえない。
実は今実践しているのは、面接官に学生との会話の内容を文字に書き起こしてもらい、人事と役員が判断するという試みです。「学び続ける力」「経験に基づく思考ができるか」「当社で成長できるか」という3つの指標ごとに学生の答えと面接官がどう感じたのかを提出してもらう。口頭で聞くと、おそらく自分の感情が入り混じった曖昧な答えしか言わないが、客観的に文字化したものであれば、感情というノイズを極力排除できます。最終的に書かれたものを人事と役員でチェックしています。
食品 経験に基づく思考は当社も重視しています。履歴書を見ればどんなことをしてきたのか、どんな学問をしてきたかはわかります。面接ではなぜそれを選んだのか、履歴書の裏にある学生の思いや考えをひたすら聞きます。それが聞く人を感動させれば大丈夫です。あるいは何かに挑戦し、失敗した経験でも失敗した事実をしっかりと受け止め、新たに選択した結果を聞き出す。それが的を射ていると思えれば、この人は当社に入っても選択のチューニングができると評価しますね。
建設 ただし気をつけないといけないのは、今の学生さんは「こういう質問にはこう答えるように」と一種のマニュアル漬けになっています。大学のなかには外部講師を就活セミナーに呼んで志望動機やアピールの仕方など詳細な模範解答を暗記させているところもあります。
だから私は基本的に学生が暗記している内容は聞かないようにしてマニュアル外しをする。たとえば最初に「○○さん、おはようございます。朝ご飯は何を召し上がりましたか」と聞く。学生が同じように丁寧な言い方で返してくれればOKです。だが「○○君、今日の朝飯何を食ったの」とフランクに聞いたときに、「今日は母親につくっていただいたご飯をたっぷり食べてまいりました」と答えると、この学生はマニュアル人間だなと判断する。つまり、商談などにはTPOがあり、相手に合わせて対応しなければうまくいきません。この学生は対応力が欠如していると見ますね。
IT それは言える。そういう学生はお客さんと会って、いきなり計画書を出して、工期はいつまで、価格はこうです、とやりかねないし、それでは商談も成立しない。営業センスというのは相手との間の取り方、コミュニケーションを通じた人間関係の構築が前提です。マニュアル仕込みの丁寧語、謙譲語はいったん置いて、この業界ではどういうビジネスをしているのかを考え、自分の言葉を使って売り込む、なおかつ自分という人間を理解してもらうにはどうすればよいかを考えて面接に臨んでほしいと思いますね。
(構成=溝上憲文/労働ジャーナリスト)