また、17年にデビューする岩手の「金色(こんじき)の風」は粘りとやわらかさ、甘みのバランスの良さが特徴的で、岩手では「ブランド米の本命」とされている。「作付けする場所は岩手の中でも分かれているので住み分け可能です」(同)という。18年デビューの宮城の「だて正夢」は、もっちりとした食感と粘りが特徴。このコメをブランド化するため、宮城は生産農家を登録制とするなど力を入れている。
ブランド米は収入低下の農家を救うか?
農家の収入低下が叫ばれるなかで、コシヒカリに代わる勢力が現れ、各県が力を入れるコメの新銘柄。農家の収入アップにつなげる狙いのほか、海外への売り込みを図るという思惑もあるようだ。
「海外への売り込みについては、ブランド米だけでなく、おにぎりや和食文化などもセットで売り込む必要があります」(同)
一方、関東では茨城の「ふくまる」や栃木の「とちぎの星」など、味の面では遜色ないが、PR不足のために存在感の薄いブランド米も存在する。また、外食店には人気が高いが、一般の消費者にはまったく知名度がないというコメもある。青森の「まっしぐら」などは、その代表だ。
「コメの消費量が減少するなかでコメのおいしさを見直してもらうには、今がチャンスです」(同)
しかし、スーパーで廉売すればブランド化には失敗する。スーパーにとって、コメは目玉商品だ。そのため「なるべく安く売りたい」という考えが働くが、そのバランスをどう取るかが重要になる。また、「はえぬき」で失敗したように、過剰生産によって飽きられるという可能性もある。
「売る相手を考える必要があります。コメの専門店か百貨店に卸すのが王道です」(同)
当然ながら、ブランド米戦国時代には勝者と敗者が存在する。
「ブランド米は、今回紹介したほかにもさまざまな品種があります。無理に拡大路線を取れば、淘汰されるコメも出てくるでしょう。しかし、いずれにしても、このようにコメが話題になるのはいいことです。コメの消費量が減少しているなかで、話題に上ることが多くなり、『最近、コメがはやっているよね』という共通認識が生まれれば、市場拡大につながるからです」(同)
今年から来秋にかけて、次々とブランド米が誕生し、食卓に並ぶ。新銘柄と、それを迎え撃つ既存銘柄との対決は見ものだ。本格的に始まるブランド米戦国時代の勝者は、どのコメになるのか。
(文=長井雄一朗/ライター)