愛人への“給与”や携帯電話代も経費計上
あるお弁当屋さんに税務調査が入ったときのことです。そのお弁当屋さんは、調査の4年ほど前に個人事業から法人成りし、近隣のビルの空きスペースにキッチンカーで出動しています。会社には、社長と、経理を担当する社長の奥さん、社員が5名おり、みんなでお弁当をつくったり、出動したり、賄いを無料で食べたりしていました。賄いは無料で食べると給与として課税されますので、源泉徴収の対象です。
総勘定元帳を確認していると、通信費として携帯電話料金を毎月10万円ほど計上しています。年間で120万円と、経費としては安くありません。代表者に確認すると、従業員全員に携帯電話を支給しているために高額になるとの説明でした。念のため、契約書を確認すると、契約数は9口でした。どういうことか尋ねても、代表者は口をつぐむばかり。
そこで契約書の番号に、携帯電話から発信してもらうことにしました。すると、そのひとつに「娘」の名が表示されたのです。追及すると、従業員として常時働いていると言います。しかし、娘は高校生で、お弁当屋は土日が休みです。本人が学校から帰宅するのを待って、直接聞き取りを行ったところ、「テスト期間中など、午前中で授業が終わったときに手伝ったことはあるが、基本的に働くことはない。給料は受け取ったこともない」と明かしました。
実態は、代表者が娘名義の銀行口座をつくり、給料は個人的に費消していたことがわかりました。仮装ですので重加算税を賦課しました。ついでに、愛人への“給与”と携帯電話代も支出していたことが判明したので、これを否認したうえ、経理の奥さんに“告げ口”して帰りました。
不倫にかかるお金を、会社の経費で落とすのはいただけませんね。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)
●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。