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片山修「ずだぶくろ経営論」

化粧品から自動車まで…「粉体処理技術」世界トップ!ある中小企業のスゴい内側

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

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 なかでもオンリーワン技術は、86年に初代のシステムの製作・販売を開始したハイブリダイゼーションシステムによる複合化技術だ。2つの物質を、まるで自然界にもともと存在するひとつの物質のように、接合する技術だ。奈良氏は、次のように説明する。

「機械のなかのあるゾーンに、A粉、B粉の2種類の粉を入れ、一粒一粒に均等にあるエネルギーを加えます。すると、そのエネルギーによって、A粉をB粉が取り巻いて、接合するんです。つまり、物理と化学の両方の接合効果が働き、細かいA粒に、さらに細かいB粒が打ち込まれる。

 団子にきな粉をまぶした場合、きな粉は、はたけば落ちてしまいます。しかし、ハイブリダイゼーションシステムで接合したA粉とB粉は、水や溶剤につけたとしても二度と離れません。いわば、新しい素材ができあがるんです」

 新素材をつくるのに欠かせない技術だ。すなわち素材革命の担い手なのだ。同社のシステムは現在、他社の追随を許さない。まさしくオンリーワン技術である。

EV開発にも貢献

 ハイブリダイゼーションシステムによって実現した、わかりやすい例がある。カラーコピー機に使用されるトナーである。顔料と樹脂系の原料をハイブリダイゼーションシステムで接合することによって、カラーコピー用のトナーが実現したのだ。同社のシステムは、多くのトナーメーカーに納入されている。

 また、医薬品分野では、腸で溶けるべき薬を、胃酸では溶けない粒子でコーティングすることによって、胃で溶けずに腸まで届く医薬品の開発に貢献した。

 近年、引き合いが急増しているのは、車載用電池だ。自動車メーカーは、環境対応車として電気自動車(EV)の開発に力を注ぐ。EVのキモは、断るまでもなく電池である。電池の小型化、大容量化、また劣化しにくいといった性能は、EVの競争力に直結するため、各社は開発にしのぎを削る。その電池の性能向上に、奈良機械製作所のハイブリダイゼーションシステムが貢献しているという。

 車載用に使用されるリチウムイオン電池は、リチウムイオンが電解液を介して正極と負極間を行き来することにより充放電が行われる。負極材として一般的に使用されるのは、炭素系、合金系の材料だ。充放電を繰り返すことによって負極材が劣化すると、電池の性能が落ちる。したがって、劣化しにくい負極材が求められているのだ。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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