「タクシーに未来はない」と語るソフトバンク、タクシー業界向け配車サービス提供の両取り戦略
国内ではタクシー配車の競争が激化へ
ソフトバンクはライドシェア推しかと思いきや、中国ライドシェア大手の滴滴出行(DiDi)との共同事業では、日本のタクシー会社向けに配車サービスを提供することを発表した。
その背景には、DiDiの技術を使えば日本のタクシーをさらに効率化できるという目論見があるようだ。AIによる需要予測でタクシーの配車を最適化すれば、実車率は現状の42%から60%まで向上できるとする。
都心でも「タクシー待ちの客の列」や、その逆である「客待ちのタクシーの列」は珍しくない光景だが、DiDiの技術があれば改善されそうだ。2018年秋に開始するトライアルでは、まずはタクシー会社向けにタブレット端末を無償で提供するという。
こうしたソフトバンクの動きを見ていると、いったいライドシェアとタクシー会社のどちらの味方なのか、混乱してくる。だが、2つの話は時間軸が異なるともいえる。孫社長はライドシェアの日本上陸を目指して突き進みつつも、足元では国内のタクシー会社を効率化するという現実路線を打ち出してきたかたちだ。
7月30日には、NTTドコモが「全国タクシー」の配車アプリで知られるJapanTaxiと資本業務提携を発表し、ソフトバンクとDiDiに対抗する形になった。ライドシェアの日本上陸をにらみながらも、まずはタクシー配車のシェア争いが激しくなりそうだ。
(文=山口健太/ITジャーナリスト)