7月24日、消費者庁は大手ファストフードチェーン、日本マクドナルドに不当表示があったとして再発防止を求める措置命令を出しました。これは、昨年8~9月に期間限定で販売した「東京ローストビーフバーガー」など2つのメニューが、実際はローストビーフではなく58%に成型肉が使われていたにもかかわらず、ブロック肉を切断する映像を使用して、いかにもブロック肉だけを使用しているかのように宣伝していたことが、景品表示法違反(優良誤認)に当たると判断されたためです。
日本マクドナルドは、消費者庁の再発防止を求めた措置命令に対して、「説明不足があったことを深くお詫びする」とのコメントを発表していますが、今後もほかのメニューで成型肉の使用するか否かについては触れていません。
このニュースを聞き、日本マクドナルド創始者の故藤田田氏の言葉が私の頭に浮かびました。
40数年前、NHKのドキュメンタリー番組で、「マックのハンバーガーは確かに本物ではないが、20年も食べていただければ、皆、マックのハンバーガーこそが本物と思うようになります」というようなことを、自信満々に語っていました。
あれから、40数年。今、ハンバーガーといえば誰もが「マック」を連想しますが、果たして、藤田氏が豪語したように、日本人の多くが「マックこそ本物のハンバーガー」と思うようになったのでしょうか。
たとえば、2014年7月に発覚した使用期限切れ中国産鶏肉の使用は、マック商品に対する消費者の不安をさらに増幅させました。
成型肉の危険性
今回、成型肉の使用が明らかになったことで、消費者のマック離れに一層拍車がかかるとの懸念があります。なぜなら、成型肉は安価ではありますが、一部には注意が必要な食品があるからです。成型肉の存在が広く消費者に知られるきっかけとなったのは、サイコロステーキです。大手焼き肉チェーン店のサイコロステーキが成型肉でつくられていることが明らかになったことが要因です。「インジェクション霜降り加工肉」と呼ばれ、米国産などの安い輸入牛肉に、何百本もの注射針がついた機械で牛脂や添加物などを注入して混ぜ合わせ、冷凍してサイコロ状に固めるものです。そうすると、輸入牛肉の赤身肉が、いかにも霜降り状の国産のサイコロステーキらしくなるのです。
くず肉を集めて人工的につくられた成型肉もあります。くず肉というのは、骨格や内臓など各種器官周辺部に付着している畜肉で、掃除機のような吸引器で集められます。また、牛横隔膜を2~3枚、リン酸塩で結合させてつくった「ミルフィーユ」と呼ばれる成型肉もあります。
成型肉の製造にはリン酸塩などの添加物が複数使用されているケースもあります。たとえば、インジェクション加工肉にはリン酸塩とトレハロースが不可欠です。トレハロースは冷凍時にたんぱく質が変性するのを防止する目的で使われる添加物で、細菌や酵母からエタノールで抽出して得られます。甘みもある万能添加物です。安全性に関しては、今までのところ、毒性の研究報告は発表されていませんが、相乗毒性の懸念はあります。リン酸塩は結着剤として使用されていますが、体内に入るとカルシウムの働きを阻害し、骨を弱くさせる添加物で、骨粗鬆症のリスクを高める恐れがあります。また、鉄の吸収を妨げ、貧血の原因にもなります。EUでは「2018年末までに安全性の再評価を行う」と表明しています。
成型肉の安全性に関しては、添加物のほかに、もうひとつ大きな問題があります。それは病原性大腸菌O-157による食中毒です。米国では日本以上に0-157による牛肉汚染が深刻化しています。一部の成型肉には、安い米国産のくず肉や牛脂が大量に使われているものもあり、そうした商品では感染リスクが高まります。特に、不特定多数のくず肉を集めて固める成型肉は、肉の中まで十分に火を通すことが0-157対策の鉄則です。そのため、スーパーなどでの店頭販売では、成型肉の表示と「中まで火を通してください」との注意表示が義務付けられています。しかし、ファストフード店や焼き肉店などでは、成型肉使用の表示はされておらず、そのうえ火の通し具合も店任せです。
そこでBusiness Journal編集部はマックに、ローストビーフで使用された成型肉に食品添加物が加えられているのかをたずねたところ、「消費者庁から広告表示においてご指摘いただいたローストビーフは、厳選された牛モモ肉を結着剤を使用せずに加熱結着した製品となります」という回答を得た。また、「個別の食品添加物の内容につきましては、公表させていただいておりませんが、食品添加物を使用しているものに関しては安定した品質を目的に必要最低限の使用に控えております」とのことだった。
外食をする際には、どのような肉が使用されているのかを確認してから食べるようにすべきでしょう。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)