消費者が企業活動に抱く疑問を考察するサイト ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
とはいえ、ある程度の価格引き上げはやむを得ない面もある。人件費や食材費などコストが上がっているためだ。人件費は人手不足などが原因で高騰が続いている。それを示す例として、募集時平均時給が上がり続けていることが挙げられる。求人情報大手のリクルートジョブズによると、今年7月の三大都市圏(首都圏・東海・関西)の飲食店などフード系のアルバイト・パート募集時平均時給は991円で、10年前の08年7月の916円からは8%上昇している。また、食材費も高騰が続いている。そのため、ある程度の価格転嫁は致し方ないだろう。
しかし、大戸屋の価格引き上げは許容範囲を超えているのではないか。価格を引き上げる一方でメニューを充実させたこともあり、ある程度所得が高い層を取り込むことができているが、一方で手頃な価格で定食を食べたい層の離反を招いたといえるだろう。
たとえば、一般的な所得の会社員が離反していったと考えられる。一般会社員の懐は、いまだに厳しい状況にある。新生銀行の「サラリーマンのお小遣い調査」によると、18年調査の男性会社員の毎月のお小遣い額は3万9836円で、近年は上昇傾向にあるものの、それ以前と比べると圧倒的に少なく、たとえば01年調査の5万8825円と比べると32%も少ない。月に3万9836円ということは、1日当たり1300円程度でやりくりしなければならない金額だ。また、18年調査の男性会社員の昼食代は570円と、近年は伸び悩んでいる。この金額では現在の大戸屋では定食を食べることができない。こうしたことから、大戸屋から離れていった一般会社員は少なくないのではないか。
もっとも、大戸屋のメインターゲット層は20代後半から30代中盤の女性のため、一般会社員の流出はある程度、目をつぶっている側面があるだろう。そうした一方で、女性客のなかでも食事に対する支出を惜しまない層を取り込む狙いがありそうだ。
なお、前出のお小遣い調査によると、18年調査の女性会社員の毎月のお小遣い額は3万4854円で、男性会社員よりも12%以上(約5000円)少ないが、昼食代は586円と3%多い。女性会社員のほうが昼食に支出を惜しまない傾向にあることがわかる。
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