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繁栄を謳歌の日立、抱える爆弾…利益が吹き飛ぶ巨額損失リスクが表面化

文=江田晃一/経済ジャーナリスト
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 メガバンク幹部は日立の苦境をこう解説する。

「日立は自社での出資を3分の1程度に抑え、残りを英政府や民間企業から出資を募る方針だが、肝心の英政府が欧州連合(EU)からの離脱交渉などで不透明さが増していて動きが読めない。加えて、日立は完成後に電力を売って収益を得る予定だが、事業費の高騰で採算性は厳しくなっている。英政府に高値での電力買い取り価格保証を求めているが、英国民の原発事業への反発もあり一筋縄ではいかないだろう。交渉は難航が必至」
 
 実際、日立から融資相談を受けている政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)の前田匡史総裁は朝日新聞のインタビューに応じて、「厳しいことは事実。英国の政治的リスクもある」と公言までしている。
 
 日立の東原敏昭社長は「経済合理性を含めて対応していきたい」と対外的には繰り返しているが、額面通り受け取る者は日立関係者のなかにも少ない。

中西会長の経団連トップ就任でさらに混迷化

「安倍政権はいまだに原発ビジネスにバラ色の未来を描き、政府は日立の英原発プロジェクトを全面支援する姿勢を打ち出している。中西会長が経団連のトップに立ったこともあり、プロジェクト撤退の機会を失った感もある」(日立元幹部)
 
 当然ながら、日立社内でも反対の声が上がっている。現時点で中止すれば最大約2700億円の損失が発生すると日立は試算している。他社からの出資金の集まり具合などをもとに着工の可否を決める方針だが、判断が遅れれば人件費や調査費などが膨らみ、損失も雪だるま式に拡大する。
 
 日立は19年度からの次期中期経営計画では営業利益率10%を視野に入れる(19年3月期見通し8%)。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスと肩を並べ、名実ともにグローバル企業の仲間入りを目指すが、原発での損失が膨らめば目標達成にも影を落とす。
 
 日立関係者は語る。

「業績以上に問われるのは企業のガバナンスのあり方。東芝の不祥事が発覚したときに、幹部連中は『うちはガバナンスがしっかりしている』と豪語していた。だが、政権とのしがらみで経済合理性に目をつぶって原発プロジェクトに乗り出せば、ガバナンスが形骸化していることを世界中に晒すことになる」
 
 すでに英政府と日立には距離ができつつある。日立が稼働時期を20年代前半としている一方、英政府は20年代半ばと文書に明記しており、プロジェクトの土台から揺るぎ始めている。東原社長は「19年内に(着工するか)意思決定する」と繰り返すが、すでに意思決定時期も後ズレするのではとの観測も広まる。撤退するにせよ、損失が膨らむのは避けられそうもない。
 
 もちろん、採算性が見込めないにもかかわらず、強行突破した日には目もあてられない。官邸の思惑にずるずると引きずられ続ければ、日立の終わりの始まりが近づいてくる。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)

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