総合油圧機器メーカーであるKYBと子会社であるカヤバシステムマシナリーが、国の認定や顧客の求める基準に合わない建築物用免震・制振用のオイルダンパーを出荷していたことが明らかになった。KYBは性能検査のデータを書き換え、基準を満たさないダンパーを納入してきたという。それをKYBは“不適切行為”としている。
今回はっきりしたことは、同社の経営管理体制がずさんだったということだ。KYBの公表した資料を見ると、いつ、どこで、だれが検査結果の書き換えを始めたか、真相が解明されていない。その姿勢を見ていると同社が事態の重大さを本当に理解しているか疑問符が付く。基準を満たさないオイルダンパーが設置された建物の一部が公表されはしたが、それは対象物件の7%でしかない。KYBが今回の問題にどう対処し、その上でどのように持続的な成長を目指すか、先行きは不透明だ。
KYBの不適切行為の発覚を受けて、企業は不正対策を見直すべきだ。わが国では、企業統治=コーポレートガバナンスを強化すべきとの考えが強まっている。その目的は、利害関係者(株主や顧客、社会)との関係をより強固にするためだ。
それにもかかわらず、企業の不祥事や不適切行為の発覚はあとを絶たない。詐欺に巻き込まれ損失を出す企業もある。いずれも、ガバナンスや内部統制以前に、不正を許さないという基本的かつ常識的な発想の欠如が原因だろう。
ありえないKYBの経営管理体制
10月16日、KYBは国土交通省に986件(987件とする報道もある)の共同住宅、事務所、医療機関などに国の定めた性能評価基準や顧客との契約内容に適合しないオイルダンパーが設置されていることを報告した。同時に、同社は2003年1月から2018年9月の間に検査結果が書き換えられた可能性が高いとの見解を示した。ただし、この資料のなかで同社は、2000年3月から検査結果が書き換えられていた可能性も排除できないとしている。
この内容からいえることは、KYBの経営管理体制が極めてずさんだったということだ。19日、KYBは基準を満たさない免震・制振用オイルダンパーが設置された70の物件を公表した。その内容を見ると、国の基準を満たしていない不適合なオイルダンパーが設置された物件が11、顧客基準を満たさないオイルダンパーが設置された物件が17、それ以外は不明となっている。この内容を見る限り、同社の検査内容の書き換えがどの程度の影響を及ぼすか、現時点では判断できない。