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KYB、性能基準未達の免震用ダンパー等「1万本」出荷…不正経緯「不明」の不気味さ

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 本来であれば、基準を満たさない製品は分解され、基準を満たすまで調整が行われる。しかし、KYBでは基準から外れた値を書き換え、検査記録として扱ってきた。この事実は重大だ。なぜなら、同社は油圧技術を強みにして成長してきたからだ。

 同社の事業領域は3つに分けられる。自動車などのショックアブソーバー等を手掛けるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業は、連結売上高の60%超を占めている。大型旅客機の主脚を格納する扉の開閉などに使われる油圧機器などを生産するHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、連結売上高の30%を占める。免震・制振用オイルダンパーなどを手掛ける特装システム等の事業は、売り上げの7%程度を占める。いずれの事業でも、油圧技術が使われている。免震・制振用オイルダンパーの検査データが書き換えられていたということは、同社の製品全体が基準をクリアしていないのではないかという不安を高める恐れがある。

“みんなで考える”集団思考の罠

 焦点を絞ってKYBが検査データを書き換えた原因を考えると、最終的に“みんなで考える=集団思考”の罠に行き着く。

 集団思考の罠とは、米国の心理学者、アーヴィング・ジャニスによって提唱された理論である。ジャニスは、集団で意思決定を行う場合、時として合理的ではない判断が容認されることを指摘した。一人で考えると「おかしい」と思うことだったとしても、それが組織だった判断になると正当化されてしまうことがある。

 ジャニスによると、集団(組織)の結束力が強い、外部(顧客など)からプレッシャーがある、欠陥などが発生しているという3つの条件がそろった際、組織の意思決定は集団思考の罠に陥りやすい。その結果、集団の決定が過大に評価されたり、組織の考えを正当化することが優先される。

 報道によると、KYBでは検査内容を書き換えることが悪質であると認識しつつも、上司が部下に数値を書き換えるよう指示していたようだ。背景には、免震・制振オイルダンパー事業がKYBの主力事業ではなかったため、多少の書き換えは問題にはならないだろうという甘い認識があったかもしれない。また、顧客への説明をそつなくこなすために、検査データを書き換えたほうが都合がよい、書き換えても大きな問題にはならないという思い込みもあっただろう。そのほかにも、さまざまな理由が考えられる。

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