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小笠原泰「日本は大丈夫か」

大学、5年制案…ラスト1年は学費無料で就活に専念、企業はスキル別採用

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 理系であれば、4年(同6年)間で今以上に十分な先端的な専門知識を学べるのではないか。文系はどうかというと、営業職中心は変わらないので、依然として専門知識の修得の意味は例外的にしか重要性を持たないといえそうである。そして、今の文系大学では変化の早い世界の最新の動き、特にデジタルテクノロジー革新とその影響を学ぶことはできないので、大学の講義に100%集中する必要はなく、自己学習、留学、長期インターン(結果として、採用内定につながっても構わない)などを積極的に組み合わせて、4年間で体験学習によって自己判断ができるようになり、選択肢を増やし、社会変化への感度を上げ、タフになることに努めるのがよいのではないか。

 現在のインターンは長期化する傾向にあるが、大学よりも学ぶことが多いと言う学生は多い。このことを大学は真摯に受け止めるべきであろう。可能であれば、学生として自分の価値をいかに上げるかに4年間集中し、その後の1年で、その価値を企業にいかに評価させるかに集中するほうが、人生における効果は高いといえよう。

 営業にはセンスとタフネスが必要である。4年間まじめに講義だけに出ていても、自己判断できるようにはならないし、選択肢も広がらないし、感度は上がらないし、タフにもならない。そして、この5年制が、卒業してすぐに就職という“皆でベルト・コンベアーに乗るのが当たり前”という意識を変えるきっかけになればと思う。これらの観点から、大学の1年延長は、意味があると筆者は思っている。

 この5年制を実施する前提として、企業側も採用方法を一部でよいので変更する必要がある。たとえば、人事部が採用後に配属先を適宜に決めるのではなく、法務部勤務の採用者は、司法書士や司法試験合格者とする。これは、米国では普通に行われている。総務部であれば、社労士の有資格者を応募資格とする。経理であれば、簿記1級か2級を応募資格とするなどがよいのではないか。「大学の専門学校化」という批判が出るかもしれないが、今の大学の実態を考えれば、必要なスキルを職種ごとに企業が提示するほうが、学生のためになるのではないか。

 また、総合職採用ではなく、P&Gや日産自動車のように、SCM、マーケティング、IT、人材開発など分野別で募集するのも、学生側も、どのような知識が必要とされるかがわかるので、4年間に何を学ぶべきかを意識できるはずである。そうすれば、企業もそれぞれの領域で応募者の必要知識やスキルや適性をじっくり見極める必要があるので、採用時期をいたずらに早める必要はなくなるのではないか。

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