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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

ボジョレー・ヌーヴォー、生産量の半分は日本に輸出…なぜ解禁日がある?

文=篠崎靖男/指揮者

 さて、ボジョレー・ヌーヴォーは、普通に飲まれるワインよりもフレッシュで、ブドウの果実味が残っていて飲みやすいワインです。これは、秋に収穫したブドウを、たった数カ月後の収穫祭でワインとして飲めるように、特別な製法でつくられているからです。しかし、今年収穫したブドウでつくったワインの新酒を収穫祭で飲むことは、お祝いの気持ちだけではなく、特にボジョレー地方の人々にとっては、これから来るヨーロッパの長い冬を、どんなワインとお付き合いできるかということを判断する、とても大事な理由があるのです。

 ワインは、毎年味が大きく違うことはご存じの通りです。それにはヨーロッパの夏の天候が大きく関係しています。そのため、日照時間が安定している米カリフォルニアやチリのようなワインは、年による差がそれほど大きくないといわれているのですが、ヨーロッパでは、たとえば、日照時間が多い夏だと、ブドウの実の糖度がワインづくりには良い塩梅になります。反対に、冷夏だと良いワインがつくれません。したがって、同じ銘柄のワインでも、1年違うだけで価値が大きく変わるのがヨーロッパワインの特徴です。一例として、有名な「ロマネコンティ」の値段をインターネットで調べてみたところ、2004年は29万円(税込み/以下同)です。それでもすごく高いのですが、当たり年の05年はなんと90万円もします。その当時、僕はロンドンに在住していたのですが、05年のヨーロッパは猛暑だったことをよく覚えています。

 ワインの良しあしをいち早く知るには、出来上がったものを飲んでみるのが一番の方法です。そんな好奇心もあり、新酒を一日でも早く飲みたいせっかちなフランス人たちが、ボジョレー・ヌーヴォーに殺到しました。そうすると、まだ発酵が完全に終わっていないのに、ほかのワイナリーよりも先行販売して、大儲けをたくらむ悪いワイン業者も出てきて、ワインひとつで大騒ぎになりました。そこで、フランス政府が解禁日を決めたのです。

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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