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さて、ボジョレー・ヌーヴォーは、普通に飲まれるワインよりもフレッシュで、ブドウの果実味が残っていて飲みやすいワインです。これは、秋に収穫したブドウを、たった数カ月後の収穫祭でワインとして飲めるように、特別な製法でつくられているからです。しかし、今年収穫したブドウでつくったワインの新酒を収穫祭で飲むことは、お祝いの気持ちだけではなく、特にボジョレー地方の人々にとっては、これから来るヨーロッパの長い冬を、どんなワインとお付き合いできるかということを判断する、とても大事な理由があるのです。
ワインは、毎年味が大きく違うことはご存じの通りです。それにはヨーロッパの夏の天候が大きく関係しています。そのため、日照時間が安定している米カリフォルニアやチリのようなワインは、年による差がそれほど大きくないといわれているのですが、ヨーロッパでは、たとえば、日照時間が多い夏だと、ブドウの実の糖度がワインづくりには良い塩梅になります。反対に、冷夏だと良いワインがつくれません。したがって、同じ銘柄のワインでも、1年違うだけで価値が大きく変わるのがヨーロッパワインの特徴です。一例として、有名な「ロマネコンティ」の値段をインターネットで調べてみたところ、2004年は29万円(税込み/以下同)です。それでもすごく高いのですが、当たり年の05年はなんと90万円もします。その当時、僕はロンドンに在住していたのですが、05年のヨーロッパは猛暑だったことをよく覚えています。
ワインの良しあしをいち早く知るには、出来上がったものを飲んでみるのが一番の方法です。そんな好奇心もあり、新酒を一日でも早く飲みたいせっかちなフランス人たちが、ボジョレー・ヌーヴォーに殺到しました。そうすると、まだ発酵が完全に終わっていないのに、ほかのワイナリーよりも先行販売して、大儲けをたくらむ悪いワイン業者も出てきて、ワインひとつで大騒ぎになりました。そこで、フランス政府が解禁日を決めたのです。
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