この問題は昨年12月、東海テレビが「ふるさと納税 市町村が受けた寄附の10%超がサイトへの手数料等に 東海3県独自調査で判明」とし、「高額で、制度の趣旨にそぐわない可能性がある」との専門家の指摘を伝えている。泉佐野市も「サイトに払う代わりに寄付者に還元するだけだ」と言うが、ふるさと納税で、サイト運営会社や返礼品を扱う会社などに儲けさせることは、税金の使い道として正しいことなのだろうか。
ふるさと納税は、収められた税金の地方自治体間の移動でしかない。ふるさと納税によって、税金が増えるわけではない。サイト運営会社や返礼品提供会社の法人税がどのくらい増えたのかわからないが、ふるさと納税のお蔭で法人税が増えたという話は聞かない。
100億円相当のギフト券を配るためには、最低でも500億円の寄付が必要になる。とても無理な数字だと思うかもしれないが、相手は裕福な家庭だ。年収700万円の家庭の場合、2000円の出費で、名目10万円寄付することで、3万円相当の返礼品と2万円の金券が手に入るのだ。喜んで寄付をするだろう。500億円は夢の数字ではない。
誰がためのふるさと納税か
しかし、今の日本は税金を払いたくても払えるほどの収入がない世帯も多い。収入が少なければ、ふるさと納税(2000円)で1年分の米を買うこともできないのだ。収入が多い家庭ほど、ふるさと納税の恩恵を受けることができる。
17年に135億円の寄付を集めた泉佐野市では、返礼品を提供した会社の給料は上がったのだろうか。非正規社員は正社員になったのだろうか。福祉や子育て支援は充実したのだろうか。生活保護者は減ったのだろうか。500億円集まれば、泉佐野市はアマゾンの100億円の売上に貢献することになる。アマゾンは、日本国民にどんな貢献をしてくれるのだろうか。
サイト運営に手数料を払わない分が浮いているなら、なぜ、それを泉佐野市民のために使わないのだろうか。エビ(100億円)で鯛(500億円)を釣るつもりなのだろうが、それが税金の使い道として正しいのだろうか。135億円の寄付で10億円浮いたのなら、それを福祉や子育て支援に使うことはできないのだろうか。
ふるさと納税を利用すれば、裕福な家庭は年間2000円で数十kgの米や牛肉、数百本の缶ビールが手に入る。一方で、収入が少ない家庭はなんの恩恵も受けることができないのだ。政治とは、金持ちをさらに裕福にすることではない。貧困をできるだけ少なくすることだ。政治の原点、税金の使い道を、もう一度、国民一人ひとりが考えるべきではないだろうか。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)