そこで出前館は、配達機能を持つ外部企業と提携し、提携した外部企業が抱える配達員が料理の配達を行う仕組みの「シェアデリ」を開発し、16年8月からサービスを始めている。これにより、飲食店は自分たちで配達する必要がなくなった。バイクや配達要員を自前で確保する必要がなく、作業負担を減らすこともできるようになった。代わりに飲食店は、出前館に報酬を支払うほか、シェアデリ拠点の企業にも報酬を支払う必要がある。
夢の街創造委員会は16年12月に朝日新聞と業務提携し、新聞販売店ASAをシェアデリの拠点に加えた。このような提携でシェアデリの拠点数は増えており、18年8月期末時点の拠点数は1年前の10拠点から増えて60拠点となった。19年1月末時点では92拠点にまで増えている。ちなみに宅配ずしの「小僧寿し」もシェアデリに参画し配達を行なっている。
出前館のシェアデリは、17年6月に吉野家が活用を始めたことがひとつの転機となった。これを皮切りに、「天丼てんや」「餃子の王将」「リンガーハット」「ロッテリア」といった大手外食チェーンの出前館への参加が相次いだ。
宅配で収益悪化の恐れも
宅配はインターネットの普及が追い風になっている。スマホを片手に手軽に注文できるためだ。出前館はLINEと組み、17年7月から、無料対話アプリ「LINE」で飲食店の料理を注文できるデリバリーサービス「LINEデリマ」を始めた。会員数は大きく増えており、18年6月末時点で650万人を突破している。
LINEは夢の街創造委員会の筆頭株主ということもあり、出前館との連携を強化している。18年8月には期間限定で、出前館の支払いで同社が提供するスマートフォン決済サービス「LINEペイ」を利用すると支払い額の50%を還元するキャンペーンを始めた。
ファミリーレストラン最大手のすかいらーくホールディングスも、料理の宅配を強化している。国内で約3100店(18年12月末時点)展開しているが、そのうち約1000店で自前の宅配サービスを手がけている。同社の宅配事業は成長を続けており、17年12月期の同事業売上高は前期から8.8%増と大きく増えている。その後も好調で、18年1~9月期は前年同期比17.5%増の大幅増収を達成した。
外食各社が宅配に力を入れているのは、共働き世帯が増えていることが影響している。労働力調査(詳細集計)によると、17年の共働き世帯は全国で1188万世帯で、専業主婦世帯(641万)を大きく上回る。また、共働き世帯は増加傾向にある。こういったことから、食事を早く済ませたいといった「時短需要」が高まっている。
こういった時短需要や、10月の消費増税に伴う軽減税率の導入で外食の宅配に関心が集まっている。
飲食店にとっては商機となるが、一方で収益性低下のリスクをはらむ。外食業界では原材料費や人件費などのコストが高騰しているが、宅配によるコスト増がこれらに加わるため、宅配で十分な販売増を実現できなければ収益性は低下しかねない。商機ではあるが、難しいかじ取りを迫られる局面も出てきそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。