「令和元年」不況の兆候…各種経済統計が軒並み悪化、消費増税見送りの可能性も
さらに日本半導体製造装置協会(SEAJ)による日本製半導体製造装置の販売統計では、19年2月はついに前年同月比2ケタ減、22.6%減の1,382億5,100万円となった。18年12月にマイナスへ転じてから3カ月連続、さらにこれまでは1ケタ減だったが、2ケタ減となった。
電子部品、電子機器、白物家電、重電機器、半導体製造装置、このいずれもが国内出荷・生産は厳しいという見通しである。国内景気を大きく牽引する電機、エレクトロニクス業界の失速は統計でも明らかである。
令和元年後半に想定されるいくつかのシナリオ
内閣府が毎月発表する景気動向指数は、今のところまだ厳しい表現にはなっていないが、早い段階で「景気悪化」が織り込まれる可能性はある。これだけ各種統計の減速が出てくれば、織り込まざるをえないだろう。
そうなると問題となるのは、それでも秋に消費税を引き上げるのか、という点に絞られてくるが、今回も消費増税を延期すると3度目であり、延期はされないと思われる。すでに小売業を含めて多くのところで増税に備えたレジの変更など対応は始まっている。状況は厳しくても「今度ばかりは延期できない」というのが本音だろう。安倍首相としても経済政策がうまくいっていないことを認めることになる。消費税は上げざるを得ないだろう。
景気減速がこのまま続くとして、消費増税がさらにこれに追い討ちをかけるというのが、令和元年後半の最も可能性が高いシナリオである。
しかし、もうひとつのシナリオの可能性がある。景気減速を理由に、消費増税を再度断念、そしてそれを手土産に衆参同日選挙を実施するという政治的判断である。いささか強引だが、政治的な戦略となると、そんなこともあり得るのかもしれない。ただこの場合は、そもそも景気の悪化が隠し切れないほど表面化しているという前提があり、景気という観点でいえば事態はより深刻化しているということになる。
無論、景気がV字回復する可能性もゼロではない。今は想像しにくいが、そんなシナリオもあり得るかもしれない。しかし仮にこれから景気が急回復したとしても、消費増税は戻りかけた景気に冷や水を浴びせるかたちになることは容易に想像できる。そう考えていくと、どの道をたどっても景気の減速が続くことは避けられないように思える。
新元号の幕開けは、なかなか厳しいといわざるを得ない。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)