もっとも、各種施策で混雑感が和らいだ可能性は捨てきれない。たとえば、昨年7月に導入した公式アプリでは、各アトラクションの待ち時間の目安がわかるようにしたり、待ち時間などにグッズを購入して帰り際に土産店に足を運んで商品を受け取れるようにするなど、快適さの向上を図っている。ただ、抜本的な解決策とはいいがたい。
先述した年間パスポートの値下げと合わせて、同パスポート利用の「除外日」を設けたことも混雑緩和策のひとつだ。入園者数が多くなるお盆休みや年末を中心に、年間パスポートが使えない日を設定し、混雑の緩和を図ったのだ。ただ、年間パスポートの保有者数が少ないため、これも効果は限定的だろう。
顧客満足度が高まった理由
こうした混雑緩和策を実施してきたが、抜本的な解決策と呼べるものは見当たらない。そのため、18年度の混雑感は前年度より強まったと考えられる。良くて“前年度並み”がせいぜいだろう。
混雑とチケット価格の面で顧客満足度が高まった理由は見いだせない。そうなると、理由はほかにある。「開業35周年イベント」が特に大きいだろう。TDRでは、18年4月~19年3月まで特別イベント「ハピエスト・セレブレーション」を開催。開園35周年を記念した新たな昼パレード「ドリーミング・アップ!」を導入するなどした。また、人気アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」をリニューアルしている。
35周年イベントは、売り上げにも大きな影響を及ぼした。入園者数が増加したほか、入園者1人当たりの売上高が19年3月期は前期比1.7%増の1万1815円に高まり、過去最高を更新した。そのなかでも特に商品販売収入が大きく伸び、3.3%増の4122円となった。イベント関連商品が好調だったという。こうした状況から、35周年イベントに対する利用者の評価は高いことがうかがえる。顧客満足度の向上に大きく寄与したといえるだろう。
35周年イベント効果のためか、TDRの「感動させる力」は高まっている。日本生産性本部は顧客満足度指数とともに、利用した際にどの程度感動したかを示す「感動指数」を合わせて公表しているが、TDRの18年度の感動指数は77.8で、17年度(72.6)や16年度(72.1)と比べて大きく上昇しているのだ。35周年イベントに感動する人が続出したのではないか。
35周年イベントはオリエンタルランドの業績に大きく貢献した。19年3月期の連結決算は、売上高が前期比9.7%増の5256億円、営業利益は17.2%増の1292億円だった。大幅な増収増益で、35周年イベントさまさまだろう。