「番外地」
改めて東証1部上場企業を調べてみると、頂点と位置づけられる市場に、株式を公開していること自体が不思議と思われるような銘柄は多い。
頻繁に業態を変更して実態が把握できない、苦し紛れとしか思えない増資を乱発する、慢性的な業績不振によって2桁の株価水準が定位置になっているものもある。わけても市場関係者からも「番外地」と揶揄されるような時価総額の底辺グループを形成する企業は、ベテラン投資家でも社名すら認知していないような会社が多い。このあたりはヤフーファイナンスなど各種の株式サイトで、時価総額の下位ランキングを検索すれば、実感できるのではないか。
時価総額もさることながら、存在意義さえ疑われるのは、こうした銘柄群の市場性(売買数量)の低さであろう。過去1カ月を見ても、1日の平均出来高が1万株に満たないものが相当数ある。投資経験がある方ならば理解できるであろうが、この程度の出来高では普通に取引を行うことさえ難しい。指し値注文をすれば約定はできず、成り行き注文では想定外の高値、安値で約定してしまう危険性が高くなるからだ。
さらに問題であるのは、商いの薄さを利用した株価操縦が可能なことだろう。一定の売買テクニックを有していれば、思うままに株価を操ることは難しくないはずだ。株価自体も低位なものが多いから、投資資金もそう多くはいらない。現状のまま放置をすれば、松谷天一坊(明治から大正にかけて暗躍した投機家。私設証券取引所を開設したことで知られる)もどきが蝟集することにも、つながりかねないだろう。
(文=島野清志/評論家)
【東証1部上場で1日平均出来高1万株未満の銘柄】
中国工業(5974)、小林洋行(8742)、日本鋳鉄管(5612)、ミサワ(3169)、一蔵(6186)、神栄(3004)、ヤマシタヘルスケアHD(9265)、田谷(4679)、秀英予備校(4678)、東天紅(8181)、藤久(9966)、ブラス(2424)、NCHD(6236)、盟和産業(7284)、ティーライフ(3172)、東海染工(3577)、中広(2139)、サンリツ(9366)、イーグランド(3294)、サイネックス(2376)
※調査対象は東証1部時価総額下位50銘柄。出来高は3月26日から4月25日まで。ヤフーファイナンスより引用。