米大リーグ・ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が購入したとされる邸宅の外観と周辺を映した映像など、住所と建物が特定されてしまう内容を放送した日本テレビとフジテレビが、ドジャースから取材パスを凍結されるなど取材禁止処分を受けていると12日付「現代ビジネス」記事が報じている。住居が特定されると、大谷選手夫妻が窃盗や誘拐などの犯罪に巻き込まれるリスクが高まるため、両局の報道姿勢を問題視する声も出ている。
12日(日本時間)時点で米大リーグのナ・リーグのホームラン王争いで現在首位のアトランタ・ブレーブスのマルセル・オズナと2本差の3位(16本)につけている大谷選手。今シーズン開幕直前の3月には元通訳、水原一平氏が違法賭博を行っていたとして球団から解雇され銀行詐欺の罪に問われるという騒動に見舞われたものの、好調な成績をあげている。
今月には、ドジャースの本拠地ドジャースタジアムから車で約20分ほどの距離にある場所に邸宅を785万ドル(約12億3000万円)で購入したことが明らかに。現地報道によれば、3階建てでベッドルームが5つ、バスルームが6つ備えられているという。
そんな大谷選手の邸宅をめぐる報道が問題に発展している。先月23日放送の日本テレビ系のニュース番組『news every.』は、邸宅があるロサンゼルス郊外の高級住宅街を訪問レポート。ハリウッド俳優や人気司会者などが暮らしていると説明し、レポーターは大谷選手の邸宅とみられる建物の前まで行くと、「あの家ですかね。大谷選手が購入した邸宅とみられます」と語り、映像にはその外観が映し出されていた。続けて、「敷地全体の面積は4000平方メートル」「備える設備も超ド級」「ジム、サウナ、シアタールーム」と物件の詳細を伝え、バスケットボールのコートもあるという説明シーンでは大谷選手の妻・真美子さんが元バスケットボール選手であることから「バスケットコートは妻のため?」と書かれたテロップが表示されていた。
翌日の24日には、フジテレビ系の朝の情報番組『めざまし8』も現地を訪問レポート。邸宅の前から建物の外観を撮影し、近隣住民への取材を敢行していた。
ドジャースとしては看過できない
キー局である2社が大谷選手の極めてプライベートな情報を放送したことを受け、SNS上では問題視する声が続出しているが、「現代ビジネス」記事によれば、2社はドジャースから取材パスを凍結され、加えて大谷選手のマネジメント会社から過去の映像の使用を禁止されたという。
「銃社会である米国で、高額な報酬を得ていることが知れ渡っている人物の住宅、それもマンションではなく戸建て住宅を地上波やネット動画で放送・配信するという行為は、犯罪を誘発して大谷夫妻の身に危険がおよぶ懸念がある。配慮が欠けていたというレベルでは済まない。このご時世、YouTuberですらやりそうもない行為を、なぜキー局がやったのかが疑問。大谷選手本人がどう思っているのかはわからないが、大谷選手の獲得による収益に期待して多額の報酬を支払っているドジャース、そしてマネジメントを任されているマネジメント会社からすれば、大谷選手の身にもしものことがあれば大きな損失を被るので、当然ながら看過できないだろう。
日テレの現地リポートを見て、フジも許されると思い追随した可能性も考えられるが、現地レポートをしなかったテレビ局もあるわけで、局の姿勢やプライバシー順守の意識の差が浮き彫りになった」(キー局社員)
放送倫理基準に則れば、問題があるといえる
テレビ局関係者はいう。
「現在の放送倫理基準に則れば、問題があるといえる。大谷選手が高額な報酬を得ていることは周知の事実なので、住居がバレることで、大谷選手と夫人が窃盗や誘拐などの犯罪の被害に遭うリスクを高めてしまう。著名人については本人の許可なく住宅の外観を撮影する行為のみならず、住居があるエリアが特定される報道も現在ではNGとされている。当人や家族に身の危険が及ぶ行為までいかなくても、さまざまな迷惑行為の被害を受けるリスクが生じる。誘拐などを防ぐために著名人の未成年の子どもが在籍する学校を報じることも事実上禁止されているが、もし仮に今後、大谷選手夫妻が子どもを授かれば、住居が特定されてしまうことで子どもが誘拐されるリスクを高めてしまう恐れもある」(5月25日付当サイト記事より)
別のテレビ局関係者はいう。
「日テレは運営するニュースサイトや公式YouTubeチャンネル上の動画でも『news every.』で使用した邸宅外観の映像を配信しており、結果的に大谷選手夫妻の重要なプライバシー情報を拡散させている。この報道によって興味本位の見物人やセールス・勧誘目的の営業が多数押し寄せることになれば、大谷選手夫妻としては迷惑を被ることになり、潜在的なデメリットが生まれている。
現在ではテレビで著名人に限らず特定の人物のものだとわかるかたちで住宅と周辺を映像で流す際はボカシなどを入れて加工するのが一般的で、たとえ対象が一般人であっても、自宅がバレることによって何らかの理由でその人物が被害や不利益を被るリスクを回避するためだ。週刊誌ならまだしも、なぜキー局である日テレがこのような放送をしたのか疑問」(同)
(文=Business Journal編集部)