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バス運転手に転職→過酷で即退職…朝5時~夜22時まで勤務、月給26万円

文=Business Journal編集部
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「gettyimages」より

 憧れのバス運転手に転職したところ、長時間労働と低賃金が「想像を遥かに超える破壊力」で、わずか3カ月で退職したというSNS上での投稿が話題を呼んでいる。どれほど過酷な労働環境、そして低い待遇なのか、元バス運転手の体験談を交えて追ってみたい。

 バス業界は今、大きな転機を迎えている。大きな要因の一つが「2024年問題」だ。24年4月からトラックドライバーやバス運転手など自動車運転者にも働き方改革関連法に基づいた時間外労働の上限規制が適用され、時間外労働の上限が年間960時間未満に制限される。これにより、すでに進行しているドライバー不足が深刻化すると懸念されている。21年10月、公共社団法人「日本バス協会」が会員を対象に実施した調査によると、回答した885社のうち56%もの会社が「運転手が不足している」と回答。運転手一人当たりの労働時間が制限されることで、さらに人手不足が深刻化すると予想されている。横浜市営バスは4月から367本の運行を削減し、小田急バスは3月に一部路線を廃止・減便。長野ではバス会社が一部路線の日曜運休に踏み切るといった事象が起きている(8月より一部路線は再開)。

 多くの領域で人手不足が進行するなか、業界をまたいだ人材争奪戦が起きていることもバス業界にとっては逆風となっている。22年に厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」によれば、「バス運転者」の平均年収は約399万円と、日本人の平均年収より低く、バス業界から他の賃金が高い業界に人材が流出しているとも指摘されている。

 バス業界の経営の厳しさはデータにも表れている。バス会社の倒産・休廃業などが起きており、帝国データバンクの調査によると、20年度中に発生した観光バス運行事業者の倒産は14件、休廃業・解散は32件でともに過去最多。東京商工リサーチによると、22年上半期の「貸切バス業」倒産(負債1,000万円以上)は9件で、上半期としては1993年以降の30年間で最多件数を記録した(すべて発表当時)。

おかしな勤務形態がバス業界ではまかり通っている

 そんなバス運転手に営業職から転職したというX(旧Twitter)アカウント名「(辞め)現役バスドライバー」(@busdriver_now)さんの以下ポストが一部で話題を呼んでいる。

<憧れだったバス業界に飛び込んで3ヶ月と少し、未練はありますが辞めて元の営業職に戻る事になりました。長時間労働と低賃金は頭では分かっていましたが、実際にやってみると想像を遥かに超える破壊力でした。働き方改革はありましたが、それでも尚、世間の皆様の労働時間とは大きく乖離しています>

 バス運転手という仕事は、どのような点が大変なのか。「(辞め)現役バスドライバー」さんに聞いた。

「朝4時に起床して5時に出社すると車両の出庫前点検を行い、6時始発であれば5時40分頃に車庫を出発します。一日バスを運転して、自宅に帰ってくるのは夜22時30分頃になり、23時に寝て、また翌朝4時に起床するという生活が休日以外は毎日続きます」

 仮に朝5時から夜22時までの勤務で休憩時間が1時間入ったとして週5日働くと、一日当たりの時間外労働時間は8時間、1カ月あたり約160時間ほどとなり、厚労省が定める過労死ラインを超える。だが、「(辞め)現役バスドライバー」さんの勤務記録上の時間外労働時間は月50時間ほどになっていたという。

「まず、始業時間は出庫した時間となっており、出庫前点検の時間は勤務時間にカウントされません。また、勤務時間の途中で4時間の中休みを強制的に取らされ、その間は会社に拘束されてしまうにもかかわらず勤務時間にはカウントされません。ちなみに中休みといっても会社に拘束された状態なので、まったく休息にはなりません。このように、おかしな勤務形態がバス業界ではまかり通っており、新しく人が入っても定着せずに辞めてしまうという点も人手不足を招いていると感じます」(同)

年収に換算すると330万円

 給料はどれくらいなのか。

「入社前には年収450万円くらいと説明を受けていましたが、実際には額面ベースで約26万円、そのうち基本給が約18万円、年1~2回のボーナス(賞与)は寸志というかたちで約10万円ほどで、年収に換算すると330万円くらいにしかなりません。私の会社ではドライバーが余剰気味のため、一人当たりの乗車時間が削られることで給与も見込みより減らされました。『秋口の観光シーズンになれば観光バスの本数が増えて7~9連勤になるので、収入の落ち込みを挽回できる』と言われましたが、体力的に無理があります」

 長時間労働や低賃金以外でつらい点があるのか。

「路線バスの場合は、朝に会社から渡された運行指示書に従って延々とバスを走らせるだけで、日々の仕事の内容にクリエイティブな要素が一切ないという点も個人的にはつらい部分です。カスハラ(カスタマーハラスメント)という点では、他のドライバーの話によれば、乗客が誰も停車ボタンを押さなかったので停留所を通過したところ、『降りたかったのに、なぜ停車しなかったのか』と怒られたり、スクールバスで停留所の発車時間に姿を現さなかった人から『乗るつもりだったのに、置いて行かれた』と会社にクレームを入れられるというケースがあるようです」(同)

安すぎるバス運賃

 こうした労働環境・待遇面のさまざまな問題がいつまでも解決されない理由について、「(辞め)現役バスドライバー」さんはこう分析する。

「まず、運賃が安すぎるという問題が、とても大きいと思います。減便がメディアで賑やかに報道されていますが、その背景には低運賃があり、運賃の大幅値上げを利用者が受け入れないと根本解決にはなりませんし、バス運転手の給与水準の向上も実現できません。電車と違って運転士一人当たりが運べる人数はせいぜい50人程度ですが、それを電車と同じ程度の運賃でやっていることに無理があります。

 また、会社も長く働いている人々も、バス業界の今の状況が当たり前だと思っているため、改善しようという動機が働かない点も大きいと感じます。例えば法改正によりドライバーは終業時間から次の始業時間までのインターバル(最低休息時間)を基本的には11時間、最低でも9時間取らなければならなくなりましたが、バス会社は11時間ではなく“9時間確保できればいい”という認識で、さらにベテランのドライバーの方々は『おかげで以前と比べると、だいぶラクになった』と言い、業界内部に“現状に問題がある”という認識が欠けているように感じます」

(文=Business Journal編集部)

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