求人倍率20倍…「高専」新卒の人気沸騰の理由、日東駒専より就職で有利?

国立高等専門学校機構の公式サイトより

 企業の新卒採用において、高等専門学校(高専)卒業者の人気が沸騰している。近年の高専卒業予定者への求人倍率は約20倍、就職希望者の就職率はほぼ100%で推移しており(国立高等専門学校機構の公式サイトより)、大卒新卒者と同額の初任給を出す企業も増えている。10月24日付「日本経済新聞」記事によれば、就職先にはJR西日本、第一三共、三菱重工業、大手電力、NTTグループなど大企業が並んでおり、「日東駒専レベルの大学の文系学部に行くより就職は有利になるケースも考えられ、生涯賃金が高くなる可能性がある」(転職支援サービス会社社員)という指摘もある。高専とはどのような学校なのかを追ってみたい。

 産業界からの要請にこたえるかたちで、社会が必要とする技術者を養成する目的で1962年に設立された高専。現在は全国に国公私立あわせて58校あり、学生数は全体で約6万人。5年制で実験・実習を重視した専門教育が行われており、大学とほぼ同程度の専門的な知識・技術を習得できる。カリキュラムは数学、英語、国語などの一般科目と専門科目からなり、以下のような専門学科のうち3~7学科が各校に設置されている。

・機械系学科 材料系学科
 ロボットなどのシステムを実現するための設計や開発に必要不可欠な専門科目を系統的に学びます。新時代の技術革新にも対応できる確かな基礎力や柔軟な発想力、応用力を身に付けます。

・電気・電子系学科
 電気や家電、ロボットなど、電気・電子と機器を結び付け、コントロールする知識・技術について、幅広く学びます。あらゆる分野で必要とされる専門的な知識と応用力を身に付けます。

・情報系学科
 現代の情報化社会を支えるコンピュータシステムやソフトウェア、プログラミング、セキュリティ、通信・ネットワーク技術等について幅広く学び、情報工学に関する確かな基礎力と柔軟な発想力を身に付けます。

・建設系学科 建築系学科
 橋梁や河川、地下空間、鉄道、水道等の建設構造物、都市計画や景観デザイン等の空間設計や運営・維持に関することを学ぶほか、人々が生活するための基本となる住宅やまちづくりに関することを学びます。

・化学系 生物系学科
 化学・医薬品の材料を開発・生産するための科学技術、バイオ技術をはじめ、環境と調和した持続可能な社会構築のためのリサイクル技術・環境改善技術など幅広く学びます。

・商船系学科
 航海士・船長を目指す航海コースと機関士・機関長を目指す機関コースがあり、両コースともに実験・実習を多く取り入れ、船舶運航等の海事関連職に必要な知識・技術を修得する科目等を幅広く学びます。

・社会的ニーズに対応した分野の学科
 産業界及び社会のニーズに柔軟に対応し、社会の変化や経済の多様な進展などにも対応できるよう設置された学科です。国際的に活躍できるビジネスパーソンを育成しています。

・複合系学科
 低学年次から複数の専門分野の基礎を学び、その後、自分に合った専門分野に進むことができる学科です。複数の専門分野の知識や技術を学ぶことで、広い視野から問題をとらえ解決する力を身に付けます。

※国立高等専門学校機構の公式サイトより

 高専5年間(本科)を終えた後の進路としては、より高度な技術を学ぶ専攻科への進学、大学3年次への編入、企業等への就職があり、全体の約4割が専攻科への進学ないし大学3年次への編入となっている。編入先の大学には国公立大学が多い。専攻科卒業後は大学院の修士課程に進学するルートもあり、令和5年度は東北大学大学院と筑波大学大学院が最多で各43人で、東京大学大学院、京都大学大学院、大阪大学大学院への進学者もいる。また、専攻科の学生は一定の条件を満たせば学位が授与され、社会的に大卒と同等の資格を得る。

企業は若くて理系の人材が欲しい

 なぜ高専卒人材に対する企業の採用意欲は高いのか。転職支援サービス会社の社員はいう。

「工業高校の求人倍率も全国平均で約20倍(23年卒)と高いことからもわかるとおり、要は企業は若くて理系の人材が欲しいのです。企業は大学の文系学部の学生に対して『社会で役に立たないことを4年間もかけて勉強している』もしくは『何も勉強していない』という認識なので、それよりは5年間みっちり技術を学んで、しかも若い高専新卒者を採用したいと考えるのは当然です。実際に高専ではレベルが高く実践的な理系教育が行われており、企業も学生に対して『真面目』だというイメージを持っているので、自ずと求人倍率は非常に高くなります。

 就職という面に限れば、4年間高い学費を払って日東駒専レベルの大学の文系学部に通うよりは、高専にいったほうが有利なケースはあるかもしれませんし、生涯賃金も高くなる可能性があります。すでに大学全入時代となり、大学に行くことの価値が低下しているなか、就職や将来的なキャリア形成を見据えて、大学進学以外のさまざまな進路の選択肢を検討すべきといえます」

(文=Business Journal編集部)

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