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日産、社員9千人削減も社長報酬3億円…販売100万台増の計画を8カ月で撤回

文=Business Journal編集部
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日産自動車の本社(「Wikipedia」より)

 日産自動車が2024年9月期の中間決算を発表したが、営業利益が前年同期比90%減の大幅減益で、通期予想も大幅に下方修正した。それに伴い、世界での生産能力の20%削減および9000人のリストラ策を発表。内田誠社長以下、役員たちは報酬を自主的に返納すると発表したが、それでも社長の報酬は3億円を超えていることから批判が噴出している。専門家は、日産の経営責任の取り方に疑問を投げかける。

 日産自動車は11月7日、2024年9月期の中間決算を発表した。それによると上期の連結業績は営業利益が前年同期比90%減の329億円、最終的な儲けを示す純利益も93.5%減の192億円と大幅におちこんだ。通期予想も前四半期に続いて下方修正。主力の中国や米国における新車販売の不振が主な要因と分析している。

 ほかにもインフレや円安、エネルギーコストの増大など、減益の要因が多く重なっているとはいえ、これらは他の自動車メーカーにも共通している。だが、トヨタ自動車の営業利益は3.7%の減少にとどまり、2兆4642億円を確保している。

 確かに中国では、景気減速によりさまざまな業種で売り上げの減少が報告されている。それでも、日産の場合は明らかな経営戦略の失敗が背景にあると自動車ジャーナリストは分析する。

「日産は米国でも中国でも、現地のニーズに応えるラインナップがありません。具体的には、同社のEV戦略が市場と合っていないといえます。実際に内田誠社長も会見で、アメリカ市場について『ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の需要が急速に高まっており、現在、こうしたラインナップを持っていない当社は苦戦を強いられている』、中国市場についても『ここ数年、現地メーカーの新エネルギー車が急速に増加している。その影響で当社を含むメーカーが主戦場とする市場が縮小している』などと語っており、暗に経営戦略の失敗を認めた格好です。

 その責任を取る形で、内田社長は11月から役員報酬の50%を自主返納すると発表しましたが、内田氏の報酬は6億5700万円ですから、半分を返上しても3億2850万円です。かつて赤字を垂れ流していた日産の社長に就いたカルロス・ゴーン氏が約9億円の報酬を得て物議を醸しましたが、その後、経営はV字回復し、高い報酬分の仕事をして見せました。しかし、内田社長ら経営陣は、経営戦略に失敗したにもかかわらず、一定の報酬は残し、さらに9000人もリストラするという策を発表。いわば、経営の失敗を社員に押し付けた形です。利益が減少したとはいえ、赤字に転落したわけではないから3億円の報酬も妥当だという言い訳もあるでしょうが、大幅に人員削減する企業の社長の報酬として適切とはいえないのではないでしょうか」

 日産は今年3月、2026年度までの中期経営計画を発表し、「2026年度までにグローバルで16車種の電動車両を含む30車種の新型車を投入する。2030年度までには34車種の電動車両を投入し、すべてのセグメントをカバーできるようにする」として、電動化計画の加速を打ち出した。そのなかで新車販売台数を100万台まで増やすと意欲をみせていたが、わずか8カ月足らずで撤回し、それどころか工場の閉鎖などにより世界的に生産能力を2割削減するとした。

リストラは日産のお家芸

 米国で人気が再燃しているHVやPHVの投入が遅れたことが減益の大きな要因となっている。中期経営計画ではEVと日産独自のハイブリッド機構「e-POWER」搭載車、プラグインハイブリッド車(PHEV)も含めて世界各地の事情に合わせて電動車両を投入するとしていたが、出遅れた感は否めない。また、中国でも現地メーカーの新エネルギー車に市場を奪われている。つまり、e-POWERのラインナップが投入されるまで、売り上げの回復は見込めない。

 また、日産は今年3月、自動車部品を製造する下請け企業36社に対し、自社の原価低減を目的に支払代金約30億2367万6843円を不当に減額したとして、公正取引委員会から下請法違反で再発防止を勧告された。下請代金の額から「割戻金」を差し引くことにより、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じていたと認定されている。この勧告を受け、日産は各社に減額した代金を支払っている。この影響もあり、コストを低減するために下請け企業に価格引き下げを要求するのは難しい。

 売り上げ増が当面見込めず、生産コストの減少も選択肢が少ないなか、日産の経営陣は経営状況を改善するために、固定費の工場維持費や人件費を減らす選択をしたといえる。日産はこれまでにも、経営状況が悪化するたびに大規模なリストラを断行してきた。

 バブル崩壊後、経営危機に陥っていたなかで社長に就任した辻義文は、工場閉鎖などを伴う大規模なリストラで黒字転換を果たした。また、1998年から2000年までの3年間で7000億円を超える赤字を出し、有利子負債は2兆円を超えたといわれる未曾有の経営危機には、提携した仏ルノーからカルロス・ゴーン氏を社長に招き入れ、工場を次々に閉鎖したほか、社員を全体の14%も削減するなど、厳しいコストカットを行った。その結果、2003年までに2兆円の借金を完済したといわれる。カルロス・ゴーン氏の後を受けて社長になった西川広人氏も、2019年に1万人を超えるリストラを行っている。

 こうしてみると、リストラによるコストカットは日産のお家芸といえる。特にゴーン氏が経営トップに就いていた時代には、新車開発への資金投入が制限されていた。そのため、それ以降も他社に後れを取る状況が続いている。新車開発は長期的な計画に基づいて投資する必要があり、コストカットを行っている状況下では極めて難しい。

 とはいえ、支出を抑えつつも収入を増やすための施策は打てるはずである。コスト削減と収入増は二律背反ではなく、併存可能だからだ。だが、日産は伝統的に、コストカットによって支出を減らし、利益を確保してから開発に注力するという流れを繰り返している。当面は暗い時代が続くのだろうか。

(文=Business Journal編集部)

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