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すき家・松屋に続きココイチも深夜7%加算…客離れしない”強気価格”チェーンの共通点とは

2026.09.01 06:00 2026.08.31 23:02 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=杉田誠/外食産業コンサルタント
すき家・松屋に続きココイチも深夜7%加算…客離れしない強気価格チェーンの共通点とはの画像1
CoCo壱番屋の店舗(「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
カレーハウスCoCo壱番屋は2026年9月1日、22時〜翌5時の注文に深夜料金7%を導入する。店内飲食に加えテイクアウトも加算対象とする異例の措置で、ポークカレーは646円から691円に。トッピング12種も平均17%値上げした。すき家・松屋に続く動きで、深夜営業の人件費・光熱費高騰という外食業界共通の課題を映す。

 株式会社壱番屋は8月28日、「カレーハウスCoCo壱番屋」の国内店舗において、2026年9月1日から深夜料金制度を導入すると発表した。22時から翌5時までの注文について、店内飲食・テイクアウトの両方に7%を加算する。同時に、既存トッピング44種のうち12種を平均17%(11〜60円、税込11〜60円)値上げする。看板商品「ポークカレー」は通常646円だが、深夜帯に注文すると691円になる計算だ。なお、宅配サービスは今回の深夜料金の対象外とされている。

 ここで注目したいのは二つの点だ。第一に、ココイチはすでに客単価が1,200円前後に達している「強気価格」チェーンである。値上げの余地が乏しいとも見えるタイミングで、なぜ深夜料金という新たな負担を消費者に求めるのか。第二に、深夜料金を店内飲食だけでなくテイクアウトにも適用するという判断だ。持ち帰りには接客も着席スペースの提供もない。それでも加算するという決定は、外食チェーンの深夜営業コスト構造そのものが限界に近づいていることを映し出している。

●目次

なぜ今、深夜料金なのか――人件費と固定費の二重の圧力

 外食チェーンが深夜料金という選択に至った背景には、二つの構造的な要因がある。

 一つは人件費だ。労働基準法は22時から翌5時までの労働に対し25%以上の深夜割増賃金の支払いを義務付けている。これに加え、厚生労働省の審議会は2026年度の最低賃金引き上げの目安を全国平均1,176円(前年度比55円増)とし、過去2番目の引き上げ幅を示した。深夜帯の時給は「基本時給の上昇」「深夜割増」「地域別最低賃金の引き上げ」という三重の押し上げ圧力にさらされている。

もう一つは光熱費や物流費など、深夜営業そのものを維持するための固定費だ。ここ数年、外食業界では24時間営業から撤退する店舗が相次いだ。その結果、なお深夜営業を続ける店舗は、コストを価格に転嫁する段階へと移行しつつある。

ココイチにとって深夜帯は、仕事帰りの単身者や小腹を満たしたい層が集中する時間帯であり、収益性そのものが低いわけではない。営業時間を短縮して需要を手放すより、「7%の上乗せを受け入れてもらいながら営業を維持する」ほうが合理的だという判断が透けて見える。

「深夜営業は“開いているだけ”では成立しなくなっている。人件費と固定費が同時に上昇するなかで、時短ではなく価格転嫁を選ぶチェーンが増えるのは自然な流れだ。重要なのは、値上げ分が何に使われているのかを企業がどれだけ丁寧に説明できるかだろう」(外食産業コンサルタント・杉田誠氏)

「1,000円超え」でも客が逃げない構造

ココイチは2022年から2024年にかけて複数回の値上げを重ねてきた。2022年6月に5.9%、同年12月に7.4%、2024年8月には10.5%という大幅な値上げを実施している。2024年8月の値上げ後は客数が前年を下回る月が続いたが、客単価の上昇分がそれを上回り、既存店売上高は平均6.4%増となった。会社全体では5期連続増収・3期連続増益を記録し、今期は6期ぶりに過去最高益を更新する見込みだという。

この「客数が減っても売上は伸びる」という構図は、ココイチの顧客層の特性を反映している。牛丼チェーンやハンバーガーチェーンが「ワンコイン」で気軽に立ち寄れる価格帯の維持に神経を使うのに対し、ココイチの主要顧客層は複数のトッピングを自由に組み合わせて1,200〜1,500円程度を支払う層だ。数十円から100円程度の値上げでブランドを乗り換えるインセンティブは、相対的に働きにくい。

加えて、「今夜はココイチのカレーが食べたい」という強い指名買いの存在も見逃せない。トッピングによるカスタマイズ性は他チェーンでは代替しにくく、牛丼店やコンビニ弁当への流出が起きにくい土壌をつくっている。

なぜテイクアウトまで加算するのか

今回の発表で特に異例なのは、深夜料金を店内飲食に限定せず、テイクアウトにも適用した点だ。従来、深夜料金は「接客や着席スペースを提供する対価」として説明されることが多かったが、この前提は今回の措置で崩れている。

テイクアウトであっても、深夜帯に調理を担うスタッフの人件費や店舗の光熱費は、店内飲食とほぼ同じように発生する。壱番屋は今回の改定理由として、為替や国際情勢の影響による原材料・包装資材の高騰に加え、物流費・人件費など「さまざまなコストが継続的に上昇し、企業努力で吸収できる水準を超えている」と説明している。テイクアウトを対象外にすれば、深夜に持ち帰り需要が集中し、コスト増だけを店舗側が抱え込む構図になりかねない――そうした事情も透けて見える。

消費者の受容性という観点では、店舗まで足を運ぶ「持ち帰り」と、自宅で待つだけの「宅配」とでは事情が異なる。深夜に営業している店舗を見つけた消費者の心理としては、「開いていて助かった」という安堵感が先に立ちやすく、7%(1,200円のカレーなら80円強)程度の加算は許容範囲に収まりやすいと考えられる。

一方、フードデリバリーサービスは今回の深夜料金の対象外とされた。宅配はすでに配送料やサービス料が上乗せされており、店舗受け取りに深夜料金を加えてもなお宅配より割安なケースが多い。この価格差が、持ち帰り需要の崩壊を防ぐ緩衝材として機能する可能性がある。

「深夜料金をテイクアウトにまで広げる動きは、“深夜料金=着席サービスの対価”という従来の説明ロジックが、コスト構造の実態に追いついていなかったことを示している。厨房が動いている限りコストは発生するという当たり前の事実に、価格を合わせにきたと見るべきだ」(同)

先行チェーンに見る「客離れ」の実態

深夜料金の導入は、ココイチが最初ではない。すき家は2024年4月3日から7%の深夜料金を先行導入している。導入から1カ月後の月次データでは、全店客数が前年同月比110.1%、全店売上高が同110.10%と、いずれも前年を上回る結果となった。少なくとも導入直後の段階で、客数が「激減」するような事態は確認されていない。

松屋も2024年7月から関東圏で深夜料金(7〜10%程度)の導入を始め、その後段階的に対象エリアを拡大してきた。ガストやサイゼリヤ、デニーズといったファミリーレストラン各社も10%前後の深夜料金を採用している。牛丼・ファストフード系は7%前後、ファミレス系はやや高めの10%前後という水準が、業界内である程度の相場観として定着しつつある。

もっとも、外食チェーンのすべてが同じ方向に動いているわけではない。吉野家は深夜料金を導入せず、逆に17時から23時に一定額以上を利用した客へ翌日使えるクーポンを配布するキャンペーンを展開するなど、対照的な戦略をとっている。深夜需要への向き合い方は、各社のブランド戦略や客層によって分かれているのが実情だ。

導入初期にはSNS上で反発の声が上がることもあるが、これまでのところ、深夜料金の導入が既存チェーンの客数に致命的な打撃を与えたと確認できる事例は乏しい。「深夜料金は悪」という受け止め方から、「深夜に温かい食事を提供してもらうことへの正当な対価」という受け止め方へと、消費者側の意識も徐々に変化しつつあるようだ。

コストを隠さず「正当な価値」として示す時代へ

深夜料金をめぐる一連の動きは、単発の値上げニュースというより、外食業界が抱える構造的な課題の表れとして捉えるべきだろう。最低賃金の引き上げペースが今後も続くと見込まれるなか、深夜帯の人件費上昇は一時的な現象ではなく、恒常的なコスト要因として業界に定着しつつある。企業側にとっては、深夜料金を導入するかどうかだけでなく、その水準や適用範囲をどう設計し、消費者にどう説明するかが、ブランドの信頼を左右する分岐点になっていく可能性がある。

内容量を減らして単価を据え置く、いわゆる「ステルス値上げ」は、消費者に気づかれた際にブランドへの信頼を損ないやすい。これに対し、深夜料金のように「何にいくら払っているのか」を明示する価格設定は、短期的には反発を招く可能性があっても、長期的にはブランドの説明責任を果たす手段になり得る。

ココイチが踏み切った「テイクアウトへの深夜料金適用」は、深夜帯のコストが店内飲食か持ち帰りかを問わず等しく発生するという、外食ビジネスの構造的な事実を消費者に開示する試みでもある。すき家や松屋の先行事例が示すように、この種の価格転嫁が直ちに客離れへ直結するとは限らない。今後、深夜営業を続ける他の外食チェーンや中食業態にも、同様の価格設計が広がっていく可能性は高いと見られる。

「値上げの是非を論じる段階から、“何にいくら払うか”を消費者と共有する段階へ、業界全体が移りつつある。今後は深夜料金そのものよりも、その使途をどれだけ具体的に説明できるかが、チェーンごとの信頼度を左右するだろう」(同)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=杉田誠/外食産業コンサルタント)

【主な参考データ・出典】
株式会社壱番屋「深夜料金の導入および一部トッピング価格改定に関するお知らせ」(2026年8月28日) 
・日本経済新聞「ココイチ、深夜料金7%上乗せ 9月1日から午後10時以降」 
・Yahoo!ニュース(テレビ朝日系ANN)「ココイチが9月から深夜料金を導入 注文に7%加算 トッピング12種類を平均17%値上げ」 
・ダイヤモンド・チェーンストアオンライン「壱番屋、深夜料金導入=物価高で7%加算」 
・foodrink.co.jp「ココイチ、深夜料金7%導入 採用広がるが、吉野家は未だ」(2026年8月) 
・ITmedia ビジネスオンライン「すき家『深夜料金導入』から一カ月、客離れは起きていない?」 
・日本経済新聞「松屋フーズ、深夜料金7%加算『牛めし』は30円値上げ」 
・日本経済新聞「最低賃金の全国平均1176円に 26年度目安、55円引き上げ」
・ITmedia ビジネスオンライン「なぜ、3年で4回も値上げしたココイチが好調なのか 客単価1000円を突破」

BusinessJournal編集部

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公開:2026.09.01 06:00