RF1、「安さ」を捨てて黒字化…売上高126億円・営業利益18倍の裏側

●この記事のポイント
神戸の惣菜専門店ロック・フィールドは、高級惣菜ブランド「RF1」の定番商品を値上げしながら2026年5〜7月期に最終黒字9900万円(前年同期は赤字1000万円)を計上、売上高126億円・営業利益は前年比約18倍に拡大した。値上げでも客離れが起きなかった背景にある「商品価値の再構築」戦略と量り売りの仕組み、立地戦略を専門家の分析とともに読み解く。
原材料費や人件費、物流コストの高騰を受け、食品・外食・流通業界では価格改定が常態化している。帝国データバンクの調査によれば、食品主要195社による2026年の値上げ品目数は、1〜10月判明分だけで9361品目に達し、2022年以降5年連続で年間1万品目を突破する見通しだという。6月単月でも1078品目が値上げされ、平均値上げ率は14%にのぼった。
値上げが避けられない局面において、企業の対応は大きく二極化している。値上げをきっかけに客数が減り、売上・利益の両方を落とす企業がある一方で、価格を上げながら客単価と利益率を高め、増収増益、あるいは黒字転換を果たす企業も存在する。
その好例のひとつが、神戸を本拠とする惣菜専門店、株式会社ロック・フィールドだ。同社が展開する高級惣菜ブランド「RF1」は、定番商品の値上げとリニューアルを行いながら、2027年4月期第1四半期(2026年5〜7月)決算で最終黒字9900万円を計上した(前年同期は1000万円の最終赤字)。売上高は126億円で前年同期比2.0%増、営業利益は1億8000万円と前年同期の約18倍に拡大している。主力のRF1単体の売上高も78億1500万円と前年同期比2.2%増加した。
スーパーの惣菜より高く、外食に近い価格帯に位置する「高級惣菜」というカテゴリーは、一歩間違えれば「スーパーより高いのに、レストランほどの満足感はない」中途半端な存在として敬遠されかねない。それにもかかわらず、なぜRF1は値上げ後も客離れを起こさず、選ばれ続けているのか。
●目次
ロック・フィールドはどのような戦略で値上げしたのか
まず注目すべきは、値上げの「やり方」だ。ロック・フィールドの古塚孝志社長は、原材料高騰が本格化した2022年の時点で、価格改定の原則について「お客さまのニーズを的確にとらえ、おいしさや品質を維持しながら原材料やその配合なども見直し、付加価値を創出したうえで、これに見合う価格を設定する」と説明していた。単にコスト増分を価格へ転嫁する「後ろ向きの値上げ」ではなく、商品価値そのものを見直すリブランディングとセットで実施するというこの考え方は、2026年の一連の価格改定にも引き継がれているとみられる。
実際に、同社は2026年6月に定番商品の価格を改定したが、その後も販売数量を大きく落とすことなく維持できたと報じられている。9月からは冷凍食品についても約10%の値上げを予定しており、段階的な価格是正が続く見通しだ。
商品開発の側面でも工夫がある。RF1は年間およそ6回のペースで商品を入れ替え、常時70〜100品番のサラダを展開しながら、旬の食材を積極的に取り入れているという。トウモロコシ一つとっても、栽培が難しく収穫期の短い品種を産地指定で仕入れるなど、原材料への強いこだわりが商品の説得力を支えている。加えて、包装資材の使用種類数を絞り込むなど、コスト効率化も同時に進めており、「値上げ一辺倒」ではない収益改善に取り組んでいることがうかがえる。
なぜ値上げしても「客離れ」を起こさなかったのか
決算情報からは、都心部の店舗が好調な一方、郊外店は苦戦が続いているという傾向も明らかになっている。これは、価格に対する感応度が立地や客層によって大きく異なることを示唆している。デパ地下や駅ビルといった好立地の店舗ほど、多少の値上げでは離脱しにくい顧客層を抱えているとみられる。
もう一つの要因として、RF1が採用する「量り売り」の仕組みが挙げられる。100グラムあたり400〜500円台という価格設定のもとで、多くの商品を100グラム単位で購入できるため、単価が上がっても「今日は少なめにしておく」「1品だけ買い足す」といった形で、顧客自身が支出総額を調整できる。これは、単品ごとに価格が固定されている商品と比べて、値上げの心理的な抵抗を和らげる効果があると考えられる。
流通コンサルタントの永田由紀氏は、こうした構造を次のように分析する。
「値上げそのものよりも、値上げに納得感があるかどうかが消費者の購買行動を左右します。量り売りのように顧客が自分で支出をコントロールできる仕組みは、値上げ局面において心理的な負担を軽減する効果があると考えられます」
スーパーの惣菜は「調理の手間を省く」という意味合いから、罪悪感を伴う消費として捉えられがちだ。一方でRF1は、健康的な食材、丁寧な仕込み、洗練された見た目を通じて、「賢い時短」「ちょっとした贅沢」というポジティブな意味合いを商品に持たせている。このような感情的な価値の転換は、価格への納得感を高める要因の一つと考えられる。
中途半端になりかねない「高級惣菜」が売れ続ける理由
RF1のような高級惣菜が成立する背景には、比較対象の設定の巧みさもある。顧客がRF1の価格を評価する際、比較対象となるのはスーパーの数百円の惣菜ではなく、数千円かかる外食だとみられる。外食産業でも人件費や原材料費の上昇を背景とした価格改定が広がっており、その中で「家庭にいながら専門店クオリティの食事を楽しめる」という立ち位置は、相対的に割安に映る可能性がある。
家庭での「再現コスト」の高さも見逃せない。20〜30種類の野菜を買いそろえ、洗って切り、ドレッシングまで手作りする手間とコストを考えれば、時間対効果という観点からRF1の商品は合理的な選択肢になり得る。共働き世帯が増える中で、こうした「時間を買う」価値への支払意欲は今後も一定の底堅さを維持すると考えられる。
品質面では、セントラルキッチンで一括生産する工業製品的な効率性と、店舗での手仕込み・当日調理という人の手によるプロセスを両立させている点も特徴だ。完全な工場生産ではなく、仕込みや調理の一部を店舗に残すことで、「デパ地下の特別感」や出来立て感を保っている。これが、量産品にはない付加価値として顧客の納得感を支えていると考えられる。
「中食市場で価格転嫁が進む中、単なる利便性の提供だけでは価格上昇に耐えられなくなっています。今後は、家庭内調理や外食との比較優位性をいかに明確に打ち出せるかが、中食ブランドの収益力を左右するでしょう」(同)
RF1はどのような顧客を狙っているのか
同社の商品戦略や出店エリアから見えてくるのは、明確なターゲット設定だ。第一に、共働き世帯や働く女性など、時間的制約がありながらも食生活の質に妥協したくない層。第二に、量よりも質を重視するシニア層や単身層。第三に、週末の家飲みやホームパーティーといった「ハレの日」に、ちょっとした贅沢として利用する一般層である。
出店戦略もこのターゲット像と一致している。RF1は1992年の1号店開業以来、百貨店の地下食品売り場(デパ地下)や駅ビル(エキナカ)を中心に展開してきた。これらの立地は、価格に対する許容度が比較的高く、商品の価値を理解しやすい客層が集まりやすい。郊外店の苦戦と都心店の好調という決算からうかがえる傾向は、この立地戦略の妥当性を裏付けているともいえる。
ロック・フィールドとRF1の事例は、値上げが避けられない時代における企業経営に、いくつかの示唆を与えてくれる。
第一に、価格競争から抜け出すためには、「安さ」ではなく「手間や満足感」という価値を売る発想が必要になる。顧客が自分で作ろうとすれば大きな手間がかかるものを、プロのクオリティで提供できるかどうかが分かれ目となる。
第二に、値上げは単独で行うのではなく、商品価値の磨き上げとセットで実施することが望ましい。コスト増を価格に転嫁するだけでなく、顧客が得る体験価値を同時に引き上げることで、値上げへの納得感を醸成できる。
第三に、自社の商品が誰と比較されているのかを見極め、必要であれば比較対象そのものを再定義する視点が重要になる。同業他社との価格競争に巻き込まれるのか、それとも外食など上位の体験の代替として選ばれるのか。この位置づけ次第で、許容される価格帯は大きく変わる。
もっとも、今回のRF1の黒字転換には、前年に開催された大阪・関西万博による京阪神地区の客足減少の反動増という一時的な要因も寄与しているとみられ、9月に予定される冷凍食品の値上げが販売数量にどう影響するかも含め、今後数四半期の動向を注視する必要がある。値上げが常態化する時代において、価格転嫁と顧客満足の両立をいかに図るか、ロック・フィールドの取り組みは一つの参考事例として注目に値するだろう。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)
【主な参照データ・出典】
ロック・フィールド 2027年4月期第1四半期(5〜7月期)決算関連報道(神戸経済ニュース、2026年)
「食品主要195社」価格改定動向調査 2026年6月(帝国データバンク)
株式会社ロック・フィールド公式サイト(会社概要・沿革)











