株主の大半を占める中小証券会社は、ネット取引や高速売買の浸透で生き残りが難しくなっている。13年1月の経営統合で上場株式に変わる東証株を売却して、廃業する動きが加速するのは確実だ。
というのも来年1月から東証株は上場している大証株と交換され、市場で売却できるようになるからだ。大証株のTOB価格48万円を基準にすると、東証株は1株9万6912円になる。2万株を持つ証券会社が全株売却すれば、20億円近いキャッシュを手にできる計算だ。東証株式を売却し、それを退職金代わりに廃業を考えている中小証券会社のオーナーは多い。
中小証券各社が東証株を手放すのに伴い、新たに発足する日本取引所グループの株主構成が大きく変わる。外国人投資家の持ち株比率が圧倒的な多数を占め、一気にグローバル化するだろう。
時価総額で世界3位の取引所となるが、取引所の世界的な再編の波に一周遅れでようやくエントリーするのが実情だ。06年末にニューヨーク証券取引所を運営するNYSEグループと欧州の証券所グループのユーロネクストの経営統合によって、初めて大西洋をまたぐ取引所グループが誕生してから地球規模での大競争は激化した。
世界最大の取引所グループを目指すNYSEは11年2月にドイツ取引所との統合を発表したが、欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は合併を承認しなかった。欧州市場でのデリバティブ(金融派生商品)取引のシェアを、新会社が9割以上握るため、独占禁止法に引っかかると認定された。
シンガポール証券取引所によるオーストラリア証券取引所の買収計画は、豪州政府の方針や株主の意向で実現しなかったが、間違いなく国境をまたぐ取引所の再編の波がアジアにも及ぶ。
上海や香港など中国の取引所が国の経済の拡大と軌を一にして世界の主要取引所へと台頭してきたほか、国内でいち早く統合を果した韓国取引所が株価指数オプションの売買高で世界のトップに躍り出るなど、日本市場の停滞を尻目にアジアのライバルたちが急成長している。
アジアで国境をまたぐ再編の核になるのはどこなのか。香港かシンガポールか、はたまた日本取引所グループか。成長市場であるアジアの投資マネーを取り込もうと欧米の取引所がアジアの取引所をターゲットに再編を仕掛けてくることも、十分にありうる。