(「財務省HP」より)
勝氏は埼玉県出身。1969年度の東京大学の入学試験が中止になったため早稲田大学法学部に入学。卒業後、東京大学法学部に学士入学。卒業した75年に大蔵省(現・財務省)に入省。10年7月に財務事務次官に就任した。定年を過ぎていたが、定年延長で事務次官に留任していた。ほかでもない消費税増税法案を成立させるためだった。
財務省では増税をやり遂げた官僚の評価が最も高い。勝氏は増税推進派のエースとして野田首相の懐深く食い込み、組閣についても相談されるほど頼りにされていたといわれている。野党からは「野田内閣は財務省に支配されており、勝氏が影の総理だ」と攻撃された。
大物事務次官の退任後の進路が気になるところだ。来年4月に任期満了を迎える白川方明・日本銀行総裁の後任人事との連立方程式を解かなければ行き先は見えてこない。日銀総裁の指名には国会の承認が必要。総裁人事は次期、通常国会にかかるので、今年12月ごろまでには決めなければならない。
「白川総裁はデフレとの戦いで伝統的な金融政策を使い果たし、デフレ脱却ができていない、と自民党の評判は悪い。年内に総選挙があって自民党が政権に返り咲いたら、白川総裁の続投の目はないでしょう」(有力金融筋)
では、勝氏の日銀総裁の可能性はあるのか。
「大蔵・財務省出身の次官で不遇をかこっている先輩がいる。特に田波耕治氏(大蔵事務次官で前国際協力銀行総裁)と武藤敏郎氏(現・大和総研理事長)が最大の懸案。彼らを差し置いて、勝氏がいいポストに就くわけにはいかない」(同)
次期日銀総裁の使命はデフレを終息させること。財務省の一部には、いまだに「武藤氏を日銀総裁に送り込みたい」と熱望する声がある。市場からも武藤待望論は強い。次期日銀総裁の有力候補であることに変わりはない。
財務省は近年、日銀総裁人事では苦杯を嘗めさせられてきた。武藤氏は財務次官を務めた後、03年に日銀副総裁に就任した。財務省の後押しをうけ08年に総裁に指名されたが、脱官僚を掲げた当時の野党、民主党が就任を拒んだ。