ここ3代の事務次官は早稲田大学大学院教授、みずほ総研理事長、読売新聞グループ本社監査役である。これまでのように特殊法人のトップへの華麗な天下りをしていない。
勝氏は消費税増税を実現した功労者なので、それなりのポストが用意されるまで、当面、財務省の顧問として残るという説が有力だ。退任後2年間は関連する民間へは行けない決まりがある。財務省の顧問は1年はやれる。財政金融研究所顧問というポストもある。あとは大学教授になるか、政府系金融機関や独立行政法人のトップの椅子もある。
「大使に転出するという説もある。帰国子女の勝氏は、日本語よりもドイツ語のほうがうまいといわれている。欧州の大使なら、領土問題のような難しい外交課題もない。大使をやった後、2、3年後に民間に、堂々と天下りする」(霞が関の若手官僚)
東京証券取引所グループ(斉藤惇社長)と大阪証券取引所(米田道生社長)が、来年1月に合併する日本取引所グループの次期社長という線もある。日本取引所グループの斉藤・新社長が4年もやるとは、本人以外、誰も思っていない。東証は大蔵省時代から大物次官の天下り先だった。指定席が復活するという読みである。
さる8月7日、国家公務員の退職金を平均402万円減額することが閣議決定された。引き下げの実施は来年1月からで、段階を踏んで2年後に引き下げが終了する。これは極めて異例なことだ。
通常、公務員給与は、毎年の人事院の調査によって「人事院勧告」が出され、民間との格差の是正が行われる。この勧告を受けて、その年の4月に遡って引き下げ、もしくは引き上げが実施される。退職金の減額は、当然、4月から実施されるべきところだ。ところが実施は来年1月に先送りされた。
「4月から実施されれば、勝・前次官の退職金も減額の対象となる。消費税増税の立役者である勝氏の退職金を引き下げることなど畏れ多くてやれない。来年1月の実施にしておけば退職金に影響しない」(霞が関の官僚OB)
8月17日に財務省を退職した勝氏に支給される退職金は7500万円。減額されていれば6375万円になるところだった。
(文=編集部)