ブーム発祥地・アメ横の驚異、一日十数万人を集客し続ける秘密 JRとの死闘と共存
●「駅」と「山」と「街」の共存共栄
ここまで紹介した事例のように、アメ横商店街という「線」ではなく、上野地区全体という「面」で関わるのが同地区の特徴だ。地区の組織図でも二木氏が会長を務める上野観光連盟が一番上にあり、傘下に各商店街が位置し、各商店街の会長は連盟では副会長として支える。観光連盟に重きを置くのは、上野と浅草という二大繁華街を抱える台東区は年間約4000万人が訪れる巨大観光地だからで、先ほどの発言に出てきた三本柱とは、以下の意味だ。
上野の商店街幹部に振興策の話を聞くと、「駅と山と街の連携」といった言い方をする。「駅」とは上野地区にあるJR(上野駅、御徒町駅)や地下鉄(上野駅、上野広小路駅、上野御徒町駅など)、そして私鉄の駅(京成上野駅)のことを指す。「山」とは上野の山(上野公園)で、「街」とは上野の商業地区を指している。
各駅に降り立って上野動物園や博物館、美術館がある山(文化ゾーン)を訪れた人に、アメ横などの街(商業ゾーン)を散策してほしい、また買い物も駅ナカショッピングモールだけで済ませずに、地域を回遊してほしいとの思いもある。
時に利害関係が対立しながらも落としどころを探り、共存共栄してきたのもアメ横の伝統だ。先述したアメ横センタービルも、老朽化が進み、防災上の問題も関係官庁より指摘された際の解決策として、80年代に関係者の合意によって再建された歴史を持つ。
現在、商店街関係者が熱い視線を注ぐのは、3月14日に開業予定の「上野東京ライン」だ。JR宇都宮線・高崎線と東海道線が相互運転で結ばれ、新たな人の流れが期待できる。「上野やアメ横を紹介するポスターも作成され、新たな人の流れが期待される横浜地区の各駅に貼り出されています」と誇らしげに語る二木氏。
かつて、東北・上越新幹線の始発・終点を東京駅に「持っていかれた」上野駅にとって、関係者の期待は熱い。その思いは、上野公園の桜がつぼみとなる頃、一段と高まりそうだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)