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しかし、サービス業では、生産をする労働者自身が自分で品質管理をせざるを得ず、内発的な高いモチベーションで自らを律さないと事業が成り立たない。従ってサービス業の品質確保は、内部統制システムよりも、そのサービス事業の意味や企業理念に労働者が共感できるかどうかにかかっている。つまり、制度やシステムよりも、経営者の資質や企業文化が重要なのである。
このように、サービス業の生産性は、設備投資、技術、参入分野よりも、経営者の資質や企業文化といった経営力が一番影響する。だからこそ、内外の研究が示しているように、サービス業では優良サービス事業者が効率の悪い企業を買収して規模を拡大して新陳代謝を行うのが、生産性向上に一番効き目がある。それを促進するには、経営共創基盤代表取締役CEO・冨山和彦氏が主張するように、経営者個人の連帯保証や信用保証をつける金融のシステムをやめるべきであり、労働市場の流動性を増すべきである(『なぜローカル経済から日本は甦るのか』<PHP新書>より)。
ところで、優良サービス業の多くが、カリスマ的経営者に率いられ独特の個性的な企業文化を持っているのは、上記のように生産と消費の同時性というサービス業の本質に由来している。優良サービス業では、独特の研修や社員イベント、経営者の理念の徹底が行われ、労働者の内発的なモチベーション向上が図られている。
しかし、これが少し行き過ぎると、今度は世間からカルトのようだとして「ブラック企業」との批判を受けかねない。言い換えると、優良サービス業がブラック批判の罠にかかりやすいのは、サービス業の本質に由来しているだけに、十分に気をつけなければならない。
(文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者)
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