また「高校生社員」ブースでは、カヤックで働く高校生社員が、自分の持っている思いや働き方に関して説明した。「カヤックなんて、高校生は誰も知らない。でも、この企業だけにしかない価値がある」と、大学生や専門学生など年上の参加者に熱弁を振るう姿は特別だった。
「最終面接」ブースでは、柳澤大輔社長自らがその場で面接を実施していた。エントリーシート等を持ってきていなかったとしても、面接を受けることができるというおおらかさだ。また、会場入り口には当日2名の内定者が出たと具体的な数字が掲げられており、採用決定のスピードは驚異的だ。
会場を見渡すと、求職者側も多くの人が私服であった。個性的なワンピース、三原色取り揃えた髪色、和服……社員以上に個性を重んじている求職者も多く、どのブースをのぞいてみても、楽しんで会社説明会を受けている印象だった。
このようなエンターテインメント性に富んだ説明会を実施している理由について同社人事部は、「職種や仕事内容と併せ、共に働く人を重要視している人材を採用したい」(同社人事部)と語る。
●自らを「面白い」と言い切る
自ら「面白法人」と名乗る、すなわち「自社は面白い企業である」と公言しているわけだが、部外者から見るといささか奇異に感じられる。一般的に、面白いか否かを評価するのは他者であって、自主的に言うべきことではないからだ。例えば、「自分は面白い人間だ」と主張したからといって、にわかには信じられない。そこで、カヤックの社員に「面白法人」を名乗っていることについて話を聞くと、「『面白法人を名乗るなら、面白いことをしろ』とよく言われる」という一方、「面白いことを追求すれば、結果的に良いサービスができる」と胸を張る。
毎年4月1日に手の込んだウソを仕掛ける「エイプリルフールプロモーション企画」、給料の一部をサイコロの目によって決める「サイコロ給」、iPhoneと連動させた名刺「しゃべる名刺」等、多くのサービスや企画は、一般企業では到底生まれないようなユニークなものだ。撤退や売却した事業、退職者インタビュー等のコンテンツを公式ページに掲載している点も、カヤックならではといえるのではないだろうか。
枠を設けず、徹底して面白いことを追求している姿勢が感じられる。自分たちが楽しみ、相手にも楽しんでもらうことで、喜ばれるサービスにつながるという考え方なのだろう。今回の会社説明会に関しても、面白さを追求した結果、個性的な求職者のニーズに沿った場をつくり出したといえるだろう。
しかし、面白さを追求する力が今後失われる可能性も懸念される。上場したことにより、株主や投資家からの視線が常に向けられ、面白さと同じように、業績や倫理観、対外的な評価が付きまとう。今後も“面白法人”であり続け、その上で成長していくことができるのか。注目していきたい。
(文=和洲次郎/ライター)