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最後に、次のエピソードを読んで読者がどう考えられるかはご自由である。しかし、経営は表層的な現実だけを見て、良し悪しを論じられない。
能交氏には結婚前、付き合っている女性がいた。父・幸一氏に紹介したところ、「やめておけ」と言われたのだった。その心は、「お前は公人である」。能交氏は悩んだ末、父が持ってきた現夫人との縁談を受け入れたのだった。能交氏は結果的に結婚を悔いていないようだ。
「私は女房に家庭をすべて任せています。彼女がいくらこづかいを使ったかも知りません。お金をください、何かを買ってくれ、と言われたこともない」(能交氏)
日々、苦しい暮らしを強いられている薄給サラリーマンにとっては、一生のうちに一度でも言ってみたいセリフだが、見方を変えれば「公人」としては理想的な環境にいるのかもしれない。家庭のことにとどまらず、サラリーマンにつきものの私欲や出世欲などとは無関係で経営に集中できるのだから。もちろん、異論はあるでしょうが。
(文=長田貴仁/岡山商科大学経営学部教授、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー)
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