その対象は、一昔前は金融商品や不動産でしたが、最近では太陽光関連事業が多いです。広い土地のオーナーに太陽光パネルの設置を進めるのは、情報を流通させるブローカーや、設備製造や施工する業者、人、土地を生かした新規事業をつくり上げることで債権の回収懸念を先送りできる金融機関などです。
また、豪華な本社というのは、時代を問わず古今東西、間違ったカネの使い方の代表例といえるでしょう。詐欺まがいの事業やブランドイメージが顧客の購買要因に最も作用する珍しい事業でもない限り、顧客が本社の建物を見てその企業の商品を買うことはほぼありません。人材獲得に有効という意見も聞きますが、逆にそんな点に惹かれる採用者はあまり質が良いとはいえません。
(3)小さなカネに宿る神に怒られる
筆者は多くの企業再生に携わる中でコストカットを得意としていますが、年間売り上げ数十億~数百億円規模の企業で万単位の経費削減について触れると、「そんなみみっちいことして、何か意味があるのか」と経営者や社員から猛烈に批判を受けたりします。
コストカットの本当の目的は、経営者や社員の本音や価値観を推し量ることにあります。例えば自社が原因で取引先や金融機関に迷惑をかけるような交渉をする際に、タクシーをふんだんに使って相手先を訪問していたり、交渉が一段落した後に幹部だけで会社の経費を使って高いレストランで打ち上げをしたりする場面を見聞きすると、「改善しなければならない課題がたくさん残っているはずだ」と感じます。
また、飛行機やホテルは如実に社員の金銭感覚を表します。海外出張に行くのに、スケジュールよりも自分のマイレージが貯まったり食事が美味しい航空会社を優先させたり、業績が悪いにもかかわらず「規程で許されているから」という理由でビジネスクラスに乗ったり規程の上限額いっぱいを使ってホテルに泊まる人の話は、眉唾で聞くようにします。
接待交際費についても然りです。仕事と関係ない使い方は論外ですが、精算書の書き方でも、「会社の金を使うが、いつかこれを必ず結果に結びつけます」という意思を持つ人の精算書からは、しっかりとそれが伝わってきます。これは経営者も同様で、誰に何を聞かれても、きちんと説明責任を果たせるようにしているかどうかがポイントです。気持ちの緩みは絶対にどこかに表れ、それは絶対に事業のスキとなります。
ちなみに、こうしたちょっとしたお金の使い方については、コンサルタントにも当てはまると思います。業績の悪い企業や課題を抱える企業のサポートをするために高い報酬を取ること自体は、成果をきちんと出せば問題ないですが、そのプロジェクトに関連する活動経費の取扱いで高級ホテルに泊まったり新幹線でグリーン車に乗ったりするコンサルタントは、著者はお勧めしません。最終的にクライアントに請求する経費であり、根本的な姿勢として「お客様の大事なカネを使っている」という意識が弱いのではないでしょうか。