お金は特殊なエネルギーである。
「エネルギー交換が、あらゆるレベルで次々に生じて、回り回って、普遍的に行き渡ろうと流れるのが、お金の交換という現象といえます。現代のお金は、こうしたエネルギー交換の手段であるお金に、金利という時間の要素が加わったものなのです(略)古来、人がなぜこれほどお金に執着するのかを考えたとき、この生命に似た一種のエネルギーであることが、無意識に人々の中に了解されているからだと考えられます」というのは、『禅とマネー 仏教に学ぶお金との正しい付き合い方』(生田一舟著/アスペクト刊)だ。
著者の生田氏は、大手都市銀行に20年以上勤務、主に法人融資畑を歩んだエリート銀行員だったが、さまざまな出会いを経て禅僧になった人物だ。仏教という視点から“お金”について解き明かしている。
「人間はなぜこんなにお金に振り回され、苦労するのでしょうか。法廷闘争も戦争も、争いは最後にはお金に行き着きます。(略)私が何より伝えたかったのは、『お金は、神仏が人間を量る際の絶好の手段』ということです。そして、この人生は修行であり、天のお金の量り方は人の状況に応じて相対的で、地獄は必ず存在するということです」(同書より。以下同)
こうした悟りの境地に達するまでには、煩悩の塊のような大手都市銀行で、悩みに悩む20年を送る必要があった。
「現場では、返済に行き詰まって、ちゃぶ台を引っくり返す上場会社の社長、銀行の言うことを無視して不動産投資に走り、破たんするメーカーの経営者たち、逆に社長の株式投資を阻止しようとして飛ばされる財務部長、いかがわしい水道管浄化技術を元に銀行からお金を引き出そうと上層部から手を回す輩、実際の物件を見ることもなく転売益を狙って銀行の応接室を出入りする不動産業者、資金需要はあるものの社会的に問題視されているノンバンクに群がるバンカーたち、タクシー会社から持ち込まれる巨大観音立像への融資案件、先祖代々の畑に不採算のアパートを建ててしまい困窮する夫婦、目先の欲にくらんで騙される公認会計士資格を持つ銀行員」
「『やはり何かおかしい……』時おり息抜きにトイレに席を立つと、『これは現代の牢屋ではないか、自分は何かモルモットのように飼育されているのではないか、ここに血は通っているのか』『ここにいる皆は、金融の本質が分かっているのか。それとも何かに阻まれて直視しようとしていないだけなのか』――24時間、何兆円もの巨額マネーを動かしているメガバンク組織の頂点にいながら、私は度々そんな思いに駆られました」
●外資系有名ブランドの脱税の手口
お金に対する疑問が深まったのは、世界的に有名なブランドの日本法人から数百億円規模の資金調達の話が持ち込まれたからだという。