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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

誤った「ステロイド=怖い薬」神話はなぜ広まった?ただし自己判断での使用は症状悪化の危険

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 さまざまな皮膚炎の治療に使われる「ステロイド外用剤」だが、「STEROID PHOBIA(ステロイド恐怖症)」という言葉があるほど、ステロイドを“怖い薬”だと思っている人が多い。筆者は薬剤師として働くなか、多くの患者から「ステロイドは使いたくない。副作用が怖い」といった相談を受けた経験がある。しかし、ステロイド外用剤は、正しく使用すれば、安全で有効な薬である。

 ステロイドは、私たちの体の中で毎日つくられているホルモンの一種である。ステロイドホルモンには、男性ホルモン、女性ホルモン、副腎皮質ホルモンがあり、薬のステロイドは「副腎皮質ホルモン」からつくられている。体の中のステロイドホルモンは、血圧や血糖値の調整や生命の維持のため色々な役割を担う重要なホルモンである。一方、ステロイド外用剤は、副腎皮質ホルモンからつくられた軟膏、クリーム、ローションなどの塗り薬で「抗炎症作用」「局所の抗アレルギー作用」がある。

 ステロイド外用剤は、5段階の強さに分類することができる。「使用する部位・皮膚の薄さ」によって吸収されやすさが違うため、適正に使い分けることが必要である。「Strongest(最強)」「Very strong(とても強い)」「Strong(強い)」に分類されるものは、主に首から下の皮膚が厚い体幹・四肢に使用し、「Medium(中間)」「Weak(弱い)」は、皮膚の薄い顔・首・陰部に使用する。「Strongest」は副作用も出やすいので、非常に炎症の強い症状に限って、期間を限定して使うことが好ましい。乳幼児は、全身の皮膚が薄いため「Weak」を使用する。

 使用にあたり注意が必要なことは、ステロイドには免疫抑制作用があるため、菌やウィルスの感染による皮膚症状に使用すると、免疫が抑制されて一気に菌やウィルスが増殖し悪化してしまうという点である。また、帯状疱疹、ヘルペス、水疱瘡、手足口病、とびひ、カンジダ症皮膚炎、水虫などで使用すると症状が悪化するため、自己判断での使用は避けてほしい。

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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