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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

誤った「ステロイド=怖い薬」神話はなぜ広まった?ただし自己判断での使用は症状悪化の危険

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト


ステロイドに対する誤解

 ステロイドによる治療が進む歴史のなかで、1990年代にマスコミによる“ステロイドバッシング”があり、ステロイドについての副作用、長期使用に伴う弊害などが過大アナウンスされた。そのなかには、“脱ステロイド療法”を勧めるような内容もあり、根拠のない民間療法などが氾濫したという過去がある。そのような背景が、「ステロイドは怖い、使いたくない」といったイメージを先行させた一因になっていると思われる。

 ステロイドに“怖い薬”とのイメージがある原因のひとつは、副作用に関しての誤解があるだろう。ステロイドの内服薬(飲み薬)や注射薬などとステロイド外用剤を混同している人が多いものと思われる。ステロイドの副作用というと、骨粗鬆症、満月様顔貌、肥満傾向などがよく知られているが、これらはステロイドの内服薬や注射薬による全身性の副作用である。医師の指示通りに正しくステロイド外用剤を使用した場合には、全身性の副作用が出ることはほとんどない。

 ステロイド外用剤の副作用というと、長期使用により皮膚が赤くなったり、皮膚が薄くなり血管が透けて見えることがある。また、強いステロイドを使用した際に皮膚が白くなるようなことがあるが、ほとんどの場合は、使用の中止に伴い改善するので心配はない。

 副作用には個人差があるが、多くの場合は、皮膚炎等に一定期間、ステロイド外用剤の使用をしても、適正使用であれば重大な副作用は起きない。

 たくさん塗れば効果があるといわけではなく、適正使用量というものがある。ステロイド外用剤の塗布量については、「1FTU(ワンフィンガーチップユニット)」が目安とされる。人差指の第1関節部分にチューブから絞り出した軟膏(約0.5g)を、手のひら2枚分の範囲に塗りひろげるのが適切な量である。

 保湿剤と併用する場合は保湿剤を先に塗り、その後、ステロイド外用剤を症状がある部位に重ねて塗る。ステロイ外用剤を塗ったあとに保湿剤を重ねると、ステロイド外用剤が患部以外にも広がってしまうことがある。ステロイド外用剤は、患部のみに使用することが好ましい。

 正しく使用すれば、ステロイド外用剤は効果のある優れた薬である。アトピーやアレルギーなど、さまざまな原因で起きる皮膚炎は、症状を悪化させないことが大切である。そのためにも、ステロイド外用剤の作用をよく理解し、医師・薬剤師の指示に従い、有効に使用していただきたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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