みなさん、こんにちは! 米国ボストン在住の医師、大西睦子と申します。新連載「ボストン健康通信」では、私のこれまでの研究や臨床経験を通じて、注目の医学論文やニュースをご紹介しながら、日常の身近な健康にまつわる話題をグローバルに議論していきたいと思います。
最初の話題は、朝ごはんです。まず質問ですが、朝ごはんは、食べるべきでしょうか?
「もちろん食べるべきでしょう。朝ごはんは、1日で一番大切な食事ですから」とお答えになった方が多いと思います。「fast=断食」を「break=中断」する「breakfast=朝食」は、1日の最初の食事です。これまでの研究で、朝ごはんを食べると記憶力や集中力、注意力が高まり、肥満、糖尿病、心臓病のリスクを減らすことが指摘されてきました。特に代謝の活発な子供や若者において、朝ごはんでエネルギーや栄養素を補給するために重要でしょう。
朝ごはん論争
ところが最近米国では、特に大人において「朝ごはんは本当に必要なのか?」という議論が交わされています。
そもそも、この議論が盛んになった理由は、米国の深刻な肥満問題です。長い間、「朝ごはんは肥満の予防になる。なぜなら、朝ごはんと食べないと一日中空腹感が強まり、間食、ランチや夕食を食べすぎるため」と考えられていました。ところが、朝ごはんを抜くと、かえって減量できるという結果も報告されています。
2013年の米国コーネル大学の研究者らの報告では、毎日の体重管理のためには朝ごはんが不可欠、という通説にどこまで信ぴょう性があるかを確認しました。朝ごはんを食べる習慣がある人と朝ごはんを食べない人を研究の参加者として募集し、参加者が朝ごはんの時間以降、どのくらい食べるかを観察しました。
すると、朝ごはんをとらない人は、朝ごはんをとる人よりも空腹になりましたが、昼食またはその他の時間により多く食べることはありませんでした。さらに1日のトータルで見ると、朝ごはんを食べない人の摂取カロリーは、平均408キロカロリーも少ない量でした。つまり、朝ごはんを抜くと、かえって減量できるという結果だったのです。
また昨年、米国アラバマ大学バーミングハム校の研究者たちは、20歳から65歳の過体重あるいは肥満の309人の成人を対象に、
(1)朝ごはんを食べるグループ
(2)食べないグループ
(3)食べても食べなくても、どちらでも構わないコントロールのグループ
に分類し、16週間にわたり経過観察をしました。その結果、朝ごはんの摂取の有無は、減量には影響しませんでした。ただしこの研究では、朝ごはんのタイプやタイミングは調査していませんので、朝ごはんの食欲や代謝への影響は確認できていません。