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大西睦子「ボストン健康通信」

結局、朝食は食べるべきor抜くべき問題の答え!抜くと肥満予防?病気リスク増?

文=大西睦子/内科医師、医学博士
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 また、同大学の研究者たちは、朝ごはんと肥満の関係について、これまでに92の報告を調査しました。結果、それらの報告は、朝ごはんが肥満に対し影響を与えると主張していますが、実際には偏りがあり証拠がないことを指摘しています。

 ですから、「朝ごはんを食べるor食べない」という問題において、それが体重にどう影響を与えるかは、これまでの研究からはまだ明確な答えは得られていません。減量には、1日の総カロリーを減らす必要があることは明瞭ですが、今後、食事の種類や質、タイミングなどの詳細な調査が必要でしょう。

健康状態への影響

 では、朝ごはんの減量や肥満防止ばかりが注目されがちですが、ほかの健康状態への影響はどうでしょうか?

 13年に米ハーバード大学の研究者たちは、45歳から82歳の男性2万6902人を対象とした16年間に及ぶ大規模疫学調査の結果、朝ごはんを食べない男性は、冠動脈性心疾患のリスクが27%も高いことを報告しました。さらに、夜遅く食事をする人は、しない人に比べて冠動脈性心疾患のリスクが55%も高くなりました。

 興味深い点は、この報告では、朝ごはんを摂らない男性は、朝ごはんを摂る男性に比べて年齢が若く、喫煙者が多く、未婚でフルタイムの仕事を持ち、身体活動が少なく、アルコールの摂取が多いことです。また同年に、ハーバード大学のチームは、4万6289人の女性を対象にした約6年間の大規模調査の結果、朝ごはんを食べない女性は2型糖尿病と診断されるリスクが20%も高いことを報告しました

 ところが、同年スウェーデンのリンショーピング大学の研究者らは、朝ごはん抜きでも、昼食にしっかりカロリーと栄養を摂取する地中海式ダイエットが、糖尿病患者さんの代謝に有利に働くことを報告しました。

 研究者らは、2型糖尿病の患者さん21人を対象にして、低炭水化物ダイエット(朝ご飯あり、炭水化物からのエネルギー16~24%)、低脂肪ダイエット(朝ご飯あり、同45~56%)と地中海式ダイエット(朝ごはんはブラックコーヒーのみ、昼食はほかの2つのダイエットの朝食+昼食と同じカロリー+赤ワイン、炭水化物からのエネルギー32~35%)を比較しました。対象者は、さまざまな順序で3つのダイエットをすべて試します。

 結果、低炭水化物ダイエットは、低脂肪ダイエットよりも血糖値の増加が減りましたが、 中性脂肪のレベルは高い傾向にありました。地中海式ダイエットは、低脂肪ダイエットと食後血糖値は同じ程度でした。結論として研究者らは、糖尿病患者さんが1日を通して頻回の少ない食事を摂取するよりも、1回の多い地中海式食事をすることを推奨しています

 ちょうど今、私の家にイタリア人の高校生が滞在していますが、イタリアでは高校は平日でも13時半に終了するので、毎日自宅で家族とたっぷり地中海式ダイエットの昼食をとるようです。彼女にとって、昼食は栄養の摂取だけではなく、家族とのコミュニケーションにも重要な時間です。

大西睦子/内科医師、医学博士

大西睦子/内科医師、医学博士

内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に、「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側」(ダイヤモンド社)、「『カロリーゼロ』はかえって太る!」(講談社+α新書)、「健康でいたければ『それ』は食べるな」(朝日新聞出版)。

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