今回は本連載前回記事で登場した非常識君的な発言、「インフルエンザにあえて感染して、自力でインフルエンザを退治することが最も有効な免疫をつくる方法だ」の正誤を検討してみたいと思います。
まず、この極端な意見が正しいか間違っているかは、わからないのです。つまり、インフルエンザの予防接種を打つことは法律で強制されているわけではありません。本人の自由です。ましてや65歳以上でなければ基本的にすべてが自費診療であり、3000~5000円前後の接種費用は決して安いものではありません。繰り返しますが、本人の自由意志です。
そしてストーリー的にも実は間違っていません。「ストーリー的」と言ったのは、つまり自力でインフルエンザが退治できればの話です。退治するのに入院が必要だったり、何日も自宅での療養が必要になってしまえば、あまり賢明な手段には思えません。一方で、不顕性感染といって、「確かにインフルエンザに感染はしたが発症しなかった」となれば、これほど効果的な予防方法はありません。つまり無料で、仕事や学業を休む必要もなく、それも活性化したウイルスのワクチンを接種したことになります。
ちなみに、今使われているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。そして去年までは流行が予想される3種類のウイルスを不活化してワクチンをつくっていました。今年は3種類から4種類になるので、ワクチンが概算で500円ぐらい値上がりするといわれています。
不活化ワクチンよりも活性があるワクチン、通常はその病原性を落としたワクチン、つまり弱毒化ワクチンがより効果的です。弱毒化ワクチンは生ワクチンなどとも呼ばれます。そこで、フルミストという鼻の中に噴霧する方式のインフルエンザ生ワクチンが海外では使用されはじめています。今までのインフルエンザワクチンの効果がイマイチだったので、こんな新しいタイプのワクチンが登場しているのです。
免疫力を高める
以上より、本物のインフルエンザに感染して、そして発症しないことがどんなに効果的かわかりますね。
では、発症しないためにはどうすればよいのでしょうか。
いわゆる免疫力、つまり感染しない力を鍛えればいいのです。どこまで本当かわかりませんが、よく寝て、バランス良い食事をして、体力を付けて、そして万全の状態でインフルエンザウイルスの暴露を受ければ、非常識君の作戦も上手くいくかもしれません。また、感染初期に麻黄湯などの漢方薬で早期に介入すれば、不顕性感染で収まるという意見を持っている医師もいます。