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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

インフルエンザにタミフルは効かない!高確率で嘔吐や精神障害 すでに欧米では利用わずか

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 記事のトーンは、英国政府はロシュの詐欺に引っかかったといわんばかりですが、それでも欧州諸国には救いがあります。

 備蓄は膨大な量でも、医療の現場では以前からタミフルの評価は低かったため、あまり使われておらず、EU諸国でのタミフルの売り上げは、全体の数%程度で済んでいたからです。

 米国も以前からタミフルの効果には懐疑的で、米国疾病管理予防センター(CDC)が、タミフルの使用を推奨しているのは、入院が必要な重症患者、65歳以上の高齢者、5歳未満の小児、気管支喘息や糖尿病などで免疫の落ちている人、に限っています。

 それに引き換え日本では、依然としてインフルエンザになったら即タミフルが当たり前のようです。厚生労働省の治療ガイドラインを見ても、生命の危機がある重症患者から軽症の患者まで(10代を除く)、タミフルは第1選択薬とされています。

 パンデミック(世界的大流行)に備えた備蓄の量も半端ではありません。厚労省HPによると、日本では2013年4月時点で6310万人分のインフルエンザ治療薬が備蓄されており、そのうちの5424万人分がタミフルです。

 実は、タミフルの売り上げの約8割は日本市場で、もはやタミフルは日本なしでは立ちゆかない商品になっています。コクラン共同計画が決定的な調査報告を出したにもかかわらず、日本の厚労省や御用学会は今のところ、なんの動きも見せていません。

 すでにご存じの方も多いと思いますが、タミフルはインフルエンザウイルスの増殖を抑えますが、殺すわけではありません。タミフルを飲んだことで安心して、無理に働き続ければ、それこそ取り返しのつかないことになる可能性もあります。タミフルの多用によって、タミフル耐性インフルエンザウイルスも多数報告されています。

 インフルエンザにかかったら、安静にして体力を消耗させない。それがインフルエンザを治す最良の方法であり、広めないための最善の方法でもあります。また、最良の予防法は、ワクチンを打つことではなく、日頃から疲労をためずバランスのよい食事・適度な運動を心がけ、免疫力を高める生活をすることなのです。

 次回は世界から見た日本人とインフルエンザワクチンについて考えてみます。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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