昨年発行された心理学の機関誌「Intelligence」では、「子供の知能指数(IQ)を決定するのは遺伝子である」と発表し、英タブロイド紙「Daily Mail」も、今年4月16日付記事で「頭の回転の速さは先天的なものである」と報じている。
また、東進ハイスクールが2013年に行った調査によると、難関大学に現役合格した受験生の高校3年時の1日当たりの学校外平均学習時間は6時間2分、同不合格者の平均学習時間は5時間35分となっており、勉強時間に大きな隔たりはないようにも見受けられる。やはりこれも才能による差が合否を分けているということを表しているのだろうか。
そこで、小中学生の勉学をサポートするドリームエデュケーション代表で、家庭学習コンサルタントとして延べ5000人以上の子供を見てきた坂本七郎氏に、教育者の立場からこの問題についての見解を聞いた。
可変性の遺伝子は、良くも悪くもなる
「実際、遺伝子的な部分や先天的な能力が学力に大きくかかわっているという指摘もありますが、私の経験上、それがすべてではないと考えています。遺伝子のうちのいくつかには可変性があるといわれており、これらは環境によって良くも悪くもなっていくそうです。たとえば、筋肉はトレーニングをすることである程度は大きくなるのと同じように、脳も日常から使うことでパワーを発揮できるようになります。こうしたことから、学力に影響を及ぼすのは、先天的な要素が3割、後天的な要素が7割くらいだと感じています」
それでは、どんなにできの悪い子供でも、努力次第では東京大学に合格できるといえるのだろうか。
「何歳から勉強に真剣に取り組み始めるかが重要だと思います。今まで勉強する習慣がなかった生徒が高校生になってから猛勉強を始めても、一流といわれる大学に合格するのは極めて難しいでしょう。というのも、“勉強ができる子”になれるかどうかは、小学校5~6年生までにどのような環境の中で育てられてきたのかが非常に大きなウェイトを占めるからです。ここでしっかりと基礎学力を身につけてきたか、幅広い体験をしてきたかによって学習の効率やその後の学力の伸び方は大きく変わってくるのです」(同)