【図1】
【図2】
シニア世代には肉類と油脂類が欠かせない
老化を遅らせる食生活指針がもつ、血清アルブミンを増加させ老化を遅らせる効果は極めて明瞭に確認できた。図1、2は平均年齢74歳シニアを対象とした、2年間にわたる老化を遅らせる食生活指針の実践による肉類と油脂類の摂取頻度の変化の比較である。黄色棒が介入前の摂取頻度の分布で、赤色棒が介入後の分布である。ほとんど毎日食べると回答したシニアの割合が肉類でも油脂類でも増え、ほとんど食べないシニアの割合は肉類では減り、油脂類ではいなくなった。この変化は統計学的に偶然の可能性は5%未満で有意ある。図は省略したが、何も介入していない対照群は分布に変化はなかった。
老化を遅らせる食生活指針では、肉類や油脂類をよく食べるポイントがメインキャストである。この食生活指針は、実行可能性があり副作用がないことがわかった。「年を重ねると肉が嫌いになる」「脂っぽいものを好まなくなる」「体が受け入れなくなる」などと思い込んでいる方々が専門家でもとても多い。そんなことはない。
【図3】
図3はこの食事習慣の改善に伴い現れた血清アルブミン値の変化である。介入群では見事に血清アルブミンが有意に増加している。一方、対照群では減少している。血清アルブミンは加齢により自然に減少する。この変化は老化の漸進を意味する。肉類と油脂類をよく食べることは、血清アルブミンを増加させ老化の速度を遅くする。当然だが、骨や筋肉の老化による虚弱化も遅くする。シニア世代には肉類と油脂類が欠かせない。この科学論文は日本公衆衛生雑誌に介護保険が施行される1年前1999年に発表している。
今でこそ、老化による健康問題をフレイル(老化による虚弱変化を表象した形容:(frailty)予防などと表しかまびすしい。老化による健康問題とその対策手段の重要性が医療専門家も含め広く認識され始めるのは、この論文が発表されてから10年以上たってからである。
(文=熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事)